二人の小さい頃の話

つぶらな瞳。
赤く染まった頬。
太陽の光に反射してきらきらと光る銀髪。

そして花が綻んだような笑顔。


この世に生まれてまだ10年も経っていない私。
初めてこんなにも胸が苦しくなるのだと知った。



『あー…あのね、チカちゃん』
『お願い、返事はまだ言わないで』




**********




4つ年の離れたチカちゃんは何かと私に「好き」という子だった。
たとえばお菓子をあげたり、ぬいぐるみをかしてあげたり…
そんなつまらないことでもありがとうとともに「好き」という言葉をいうのだった。


それでも今日はどこかいつもと違った。

チカちゃんが髪をばっさりと短く切っていたのだ。
私はそんなチカちゃんも可愛いと思っていたのだけれど本人は不本意だったらしく少し落ち込んだ様子が見れた。

でもさすがにせっかく可愛いのに落ち込んでいるのはもったいないと

『私が好きなチカちゃんはいつだってお姫様みたいに可愛いし、輝いているよ』

そう言った。


そうしたら、少し複雑そうな顔を一瞬したけれどすぐに嬉しそうに笑って私の手を握った。
そして、私も握り返したところで思わぬ台詞を聞くことになったのだった。


「名前ちゃん…結婚してください」


女の子が言った言葉だと頭でわかっていてもすごくドキドキしてしまった。
私をまっすぐに見つめる視線からは目を逸らせず、見つめ合う結果となった。
私がほださなければならない…なのに不思議とそれはできなかった。


いつものチカちゃんとは違う、そう思いながらなんとか言葉を絞ってみるが


「お願い、返事はまだ言わないで」

そう言ったものだからとうとう私の口からは何も言えなくなった。
だけど沈黙には耐えられず、お互いに顔を赤くさせながら笑いあった。





**********


「今思えばあそこで元親が男だったと気づくべきだったね」
「ん?
 おふくろが男だって言う前に可愛い可愛い言って話聞かなかったのはお前さんじゃねえかよ…」
「そ、それは話は別だって!」


幼馴染って昔話をするたびに笑いがうまれる。
たまには今みたいに私が馬鹿だった…みたいなこともあるけれど、それも悪くない。


「ねえ、元親」
「なんだ?」
「これからも元親の思い出の中に私を入れてね」
「名前…あったりめえよ、んなもん言われなくたって勝手に入ってるっつうの」
「そっか」


叶うのならば元親の隣にずっといたい。
昔のように、今度は私が手を握ってそう願うのだった。






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小さい頃の話といいますか、大人になってからといいますか…とりあえずこの話のヒロインはどうも鈍感すぎて面白―大変ですね笑!!
お題くださった方ありがとうございました!!





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