Novel - Vida | Kerry

死んだふりした愛は火葬場に眠る



※社会人設定
※さわやかな水谷くんはいません。

高校の卒業式でしのーかに振られた俺は大学に入ってからというもの、あんなに一途だった高校の頃が嘘みたいにいろんな女の子と付き合って別れてを繰り返した。

でもどの子も本気で好きになったわけじゃなかった。恋人同士がするようなことは一通り経験してみたけど、大した幸福感もなかった。彼女なんていてもいなくてもどっちだっていいと思った。ただごくたまに感じる寂しさを紛らわせてくれればそれで。

そんな俺が名前と出会ったのは大学2年生の冬、友達の家で開かれた鍋パだった。友達が当時付き合ってた彼女の友達として呼ばれてた名前と付き合うことになったけど、正直きっかけはよく覚えてない。その場のノリと言ってしまえばそれまでだ。きっとあの時そばにいてくれれば誰でも良かった。

どうせ好きになってやれないのに付き合うなんて最低だと思う。実際今までの彼女はそれが原因ですぐ別れた。けど名前はこんな俺に懲りずに「好き」だなんて言葉をかけてくれた。
だから、何だって許してくれる気がした。俺の嫌なところ全部曝け出しても彼女だけは受け止めてくれる気がした。そんなこと思ってしまうくらい名前の隣は居心地がよかった。

今まで彼女なんて誰でもいいとか、むしろいなくてもいいとか思ってたのにいつのまにか大切な人になってた。大学に入ってから初めて誰かを好きだと思えた。卒業しても社会人になってもずっと一緒にいれたらな、なんて思ってた。

別れたのは3ヶ月前。お互い社会人になって仕事に生活にいっぱいいっぱいで、それでもなんとか時間を見つけて彼女が俺の家に会いに来てくれたあの日、珍しく喧嘩をした。

きっかけはよく覚えてない。それくらい些細なことで言い合いになった。いつもならちょっと喧嘩になってもすぐに謝って終わるんだけど、あの時はお互い日頃溜め込んでた不安とかそう言ったものが溢れ出してしまったんだと思う。

「もう嫌だ」そう泣きながら呟いた彼女に「…勝手にすれば」と思ってもないことを返してしまったのは意地を張ってしまったから。
でもそんなの口にしなければ名前に伝わるわけもなく、わずかな荷物だけを手に部屋を飛び出した彼女とそれっきり連絡も取れない。あんなに大好きだって思ってたのに、随分あっけない最後だ。

引っ越して結構経つくせに未だに片付かない段ボール。家に来るたびに「片付けなよ」って言われてたっけ。いい加減片付けなくちゃな。本棚にはCDが散乱してて、そのなかには借りたままのチャットモンチーが数枚含まれている。もう会えないのにどうやって返せばいいんだろうね。もう分かんないや。

大学を卒業したって、住む場所や職場が離れることになったって、そんなのどうってことないと思ってたよ。ずっと、何一つ変わらずこのままやっていけるって、そう思ってたよ。

でも、そうじゃなくて環境が変わったからこそ、もっと大切にしてやんなきゃいけなかった。なのに俺、ずっとお前の優しさに甘えてばっかだったよ。情けない男でごめんな。

二人で聴いたときには幸せな恋の歌だと思ったチャットモンチーのあの曲は、よく歌詞を聴いてみたら別れの歌だったよ。時間が経たないと気付けないことばっかりで嫌んなっちゃうね。

大学を卒業したって、住む場所や職場が離れることになったって、そんなのどうってことないと思ってたよ。ずっと、何一つ変わらずこのままやっていけるって、そう思ってたよ。


1016 水谷くんは自分のなかでこれが一番大事ってものがなかなか持てなくて、なんとなく日々を過ごしてるどこにでもいる普通の大学生になるんだろうなって思ってしまいます。

title : へそ


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