わたしのゆりかごに毛布はない



今回は髪が赤かった。

我が家はクソ貧乏で、以前は食べていたお菓子どころか白米すらロクに食えない。リンゴが半分皿にどーんがしょっちゅうだ。嘘だろこれ。いやいやご飯はまだ我慢できるとして、なにより問題は家族だ。お父さんが偽善者すぎる。優しい人なのは認めるけど私としては最悪だ。極力関わりたくない。反抗期を理由にあんま喋らないようにしたら妹たちに心配されたから、一応最低限の交流はしてるけど。


「なんで父さんの言うことをみんな聞いてくれないんだろ……間違ってないのに」
「そーだねーなんでだろーねー」


それが聞き苦しいんでしょー、とはさすがに言えない。小学生に言ったって分かるわけないし。あしらわれたのに気付いた杏子が不貞腐れたようにこっちを睨んでいる。バカだなー、睨んでも腹減るだけでしょーに。怖い顔にデコピンかまして席を立つ。バイトバイト、ついでに魔女狩りいってきますか。

しばらくして家に信じられない数の人が押し寄せて、杏子が魔法少女になってしまったことを知った。お父さんは泣いて喜んで演説を毎日してた。私はそれを冷めた目で見ながらモモの世話をした。杏子が魔女狩りで家にいないから極力家にいるようにした。私の生活はモモとバイトと魔女狩りの三つになった。

ある日、久しぶりに魔女狩りに行ってきた帰り、家がめちゃくちゃになっていた。杏子がした祈りがバレたんだとすぐに分かった。杏子はショックを受けて家出してしまって、結局私の生活はモモとバイトと魔女狩り。それがいつか終わることも知っていたけど、私は何もする気力がなかった。


「主よ、私たちに天の扉を開いてください……」


私が目を離した隙にモモが死体で転がっていた。お父さんの仕業だった。髭ボーボー声ガラガラの浮浪者みたいな姿で私の首に手を伸ばす。それをやっぱり冷めた目でしか見れない。もう言っていいかな? 良いよね?


「人殺しが天の国に迎えられるわけねーだろ、ばーか」


せいぜい、悪魔なり魔女なりの餌になってその薄汚い魂を有効活用されちまえ。

首に込められた力が強くなって私は気絶した。そして次に目を覚ました時、辺りは火に包まれていて、入口で泣いている杏子がいた。パキン。あ、嫌な音。指輪からいつの間にか変わっていたソウルジェムに大きなヒビが入った。やだ、火事如きの熱で歪むようなヤワな命だったわけ。あー、やだやだ。

また、やり直しかよ。
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