今泉がラッキースケベ



知ってる天井だ……じゃねえ。

気が付けば視点が反転してて部室の軽くガタがキテる電灯がチカチカしてる。後頭部打ったとか腰打ったとか、それよりも気になる感触があった。胸を、揉まれてる。てか上から押されてる。正直痛いというかなんというか。問題なのは相手だよなあ。


「ま、巻島さん……」

「おう」


目つきの悪い細目が極限まで見開かれている。長めの前髪が浮いてるせいでそれがよく見える。ああ、やっぱイケメンって睫毛長いんだね。金城とは違うイケメンだ。イケメンがすんごい間近でイケボを発してらっしゃる。なーんで今泉が私を押し倒してるのかなー?


「あ、あの」

「とりあえず退け」

「はい」


素早く起き上がった長身が完全に離れたのを確認して地面から体を起こす。なんでこんなことになったのか。きょろきょろと部室を見渡して、隅っこに転がっているボトルを発見。これ踏んでコケたのか。はあ、と浅い溜息を吐いて机の真ん中に叩きつけるように置く。


「今泉」

「はい」

「次からお互い気を付けような」

「はい」

「よし」


ボトル置いた音で肩が跳ねた以外ぴくりとも動かない今泉をそのままに部室から出る。そういえばあいつ"はい"しか言ってなかったけど大丈夫だろうか。


「ま、巻島さんっ、お疲れ様です!」

「巻島さんまた外周ですかー? お疲れっす!」

「おう」


外周じゃないんだけどな。部室前で入れ違いに入ってきた小野田と鳴子に挨拶を交わして、お目当ての人物を見渡して、見つける。いたいた。


「そういえばスカシどこにいるか……スカシ?」

「いいい今泉くんどうしたの!? 顔真っ赤だよ、熱中症!?」

「アカン、何言っても反応せえへん! 手嶋さん、ボトル余ってますかー!?」


三本ローラー付近で青八木とあーだこーだ話してる田所っちの近くにまで行く。速歩きで、いやむしろ走って。その時どんな顔してたのか自分でも分からなかったけど、青八木がすんごい顔してたから失礼なヤツだとは思った。


「あー? 一年どもが騒がしいな」

「田所っち」

「おお、巻島。一年どもはどーしたよ」

「田所っち」

「何度も呼ぶなよ、聞こえて、」


「田所っちに三十まで嫁ができなかったら、よろしくな」


お嫁に行けない体でも、田所っちなら引き取ってくれるだろうと。

そんな結構マジな考えで手を握ったら、瞬間的に振り払われて田所っちに両肩シェイクされた。さらに外周から遅れて戻ってきた金城に優しく諭され、私もそれなりに混乱していたことがよく分かった。二人共顔が怖かった。

ちなみに今泉は金城からの物理的な説得で正気に戻った。止められなくて大変申し訳ない。



(な ん だ こ れ 。ただただ今泉くんが不憫なお話になってしまいましたなんだこれ。何が言いたいって田所さんなら何人だってまとめて嫁取れるよなってことです。書いた本人が何をって感じですが私も今混乱してます。なんだこれ)
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