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案の定名前は遅れて教室に入り、「遅い」と相澤に睨まれる事となった。

「すいませんー!背中のチャックが噛んじゃって中々下がりませんでしたっ!」
「名字のヒーローコスチューム………いいっ!」
「早く席につけ」

適当な理由を作って言い訳していれば、涎を垂らした峰田と目が合い、名前は頭のモギモギを限界までモギってやりたくなった。

そのままHRも終わり荷物を纏めていれば、「なーなー名字!今から皆で訓練の反省会しようぜって話してたんだけどお前もやろーぜ!」と、笑顔の切島に声をかけられた。

「えっ、今から?」
「おう!あっ、爆豪も参加しよーぜって行っちまった…」

一刻も早く帰りたかった名前は、切島の提案に思わず顔が固まる。
切島は名前の変化に気づかず、教室を出ていこうとした爆豪に声をかけた。

「まー、気にしなくていーんじゃね?」
「名字も参加してくれよ!てかお前の個性何だ?」
「確かに!!名字くんは複数の個性を持っているのかい?!」
「えー、ちょっと待って !」

名前はグイグイと近づいてくるクラスメイト達を押しのけ、そっと鞄を手に取った。
そしてダッシュで教室から逃げようかと考えた瞬間、「おお緑谷!」と言った切島の視線の先を辿った。
今回1番白熱した戦いを繰り広げた緑谷にクラスメイトが集まる。
名前はそのまま帰ろうとしたが、「名前ちゃんの個性、気になるわ。ケロケロ」と蛙水に微笑まれ、仕方なしに椅子に座った。
緑谷に気づいた麗日が調子を伺うが、緑谷は爆豪の様子が気になった様で、すぐに彼を追いかけた。

「今日の訓練といい今の様子といい、もしかして緑谷くんと爆豪くんって仲良いのかなー?」
「いやー、爆豪のあの態度は仲良い同士じゃねぇっしょ」
「でも確か幼馴染みって言っとらんかったっけ?」

名前はいつの間にか隣にいた上鳴になんとなく話しかければ、上鳴は笑いながら、「爆豪すげぇキレてたし」と言った。
麗日は自分の記憶を辿るように言葉を漏らせば、「おお!意外な接点だ!」と、葉隠が面白そうに呟いた。

「ふーん、幼馴染みねぇ」

名前の小さな呟きは、騒がしいクラスメイト達の声にかき消された。










「名前、明日カリキュラム取ってこい」
「カリキュラム?」

名前はあれからなんとか質問の嵐をかいくぐると、逃げるようにして家に帰ってきた。
疲れた体のままアジトへ飛ぶと、邂逅1番死柄木に命令された。

「どうして明日?急すぎ!」

名前が黒霧から渡された水を飲みながら死柄木に問えば、死柄木は楽しそうに笑って、「これ見てみろよ」と言った。

「オールマイト、雄英の教師に!…って、何これ新聞の記事?」
「見たかこれ?教師だってさ…。そうか、先生は知ってたんだなァ」
「じゃないのー?今日初めてオールマイトの授業を受けたんだけどもう最悪、すっごい苦痛だったもん!」
「ははは、そりゃ可哀想になァ」

名前が心底退学したいと思っているのに、目の前の死柄木は他人事のように笑っていた。
そして名前に向き合うと、「なァどうなると思う?平和の象徴が…ヴィランに殺されたら」と言った。
名前は死柄木にも負けない愉快気な声で、「最高!」と、呟いた。

「名字名前、明日は雄英高校前にマスコミが待機してると思われます。雄英高校のセキュリティは頑丈ですが、それを隙を見て死柄木弔に破壊させます。貴方はその混乱に乗じて、雄英高校ヒーロー科のカリキュラムを盗み出してくるのです」
「それかなりリスク高いじゃん!もしバレたりでもしたら」
「あ?自信ねぇのかよ」

黒霧の話は分かったが、名前にはあまり得策とは思えなかった。
意見しようと口を挟めば、名前を茶化すように死柄木が口を開いた。

「はぁ?誰に言ってんの。やるけど?」
「ハッ、そうこなくっちゃなァ」

今日の戦闘訓練やその後の反省会でイライラしていた事もあり、名前は死柄木にそう呟くと、疲れた体を休ませるために家へテレポーテーションした。

「マスコミが張ってるなら、明日は学校に直接飛んだ方が良さそうね」

名前はそのまま眠りについた。



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