第22話


「お前が名前か」
「は、初めまして」
切れ長の綺麗な瞳が私を見る。
どことなく伏黒を思い出させるような感じがする。あれ?なんか2人似てない?
「私達の稽古に1度も顔見せねぇからどんな奴かと思ったけど、まぁ別に普通な奴だな」
「しゃけ」
言葉に反して嫌味な様子がなく、彼女が私に気を使っているのだと気が付いた。
「挨拶遅れてすいません…名字名前です。よ、よろしくお願いします」

伏黒が、2人の先輩である禪院先輩と狗巻先輩を紹介してくれた。禪院先輩と言った瞬間の彼女の瞳が怖かった(+名前で呼べと圧を込められた)ので、私は真希先輩と呼ばせて貰うことにした。
狗巻先輩は、“しゃけ“とおにぎりの具を口にしていた。しゃけ…?と疑問に感じていたら、伏黒が続けて、狗巻先輩は呪言師だと教えてくれた。解説係か?
呪言師…なるほど、野薔薇が言ってた古い家系の生まれの先輩って彼のことかと1人で納得していると、こちらに向かってピースをしている狗巻先輩と目が合う。なんかお茶目な先輩だな。

「名前、術式いいもん持ってんだってな」
真希先輩が楽しそうに言う。
伏黒達が話したのかな…?いや、でも2人に術式開示したのは少し前だったし…と思案していると、「悟に聞いたんだよ」と真希先輩は言う。
「鍛えてやってくれともな」
真希先輩は今度こそ、にぃっと笑った。
「近接戦闘、頑張ろうな」
もしかして…私死ぬ?

「あ“ぁ!!もう休憩!!!」
ボロッボロの野薔薇がやってきた。
すごい怒ってる。目がつり上がってる。
「パンダ先輩容赦ないのよ!!」
「受け身は大事だぞ〜」
のんびりとした口調で、のっしのっしとこちらに向かってくるパンダ。そうパンダ。
「伏黒、ずっと気になってたんだけど…あのパンダも」
「先輩だ。パンダだ」
伏黒はそれ以上何も言わない。
情報が………欲しい。
「よろしくな名前」
「よろしく、お願いします」
握手した手はフワフワだった、可愛い。





「あと2年はもう1人先輩がいる」
あの後先輩達にこってり扱かれ、寮に帰る頃にはヘロヘロだった。
確かに私は術式に頼る所があったため、近接戦闘はどちらかと言えば得意ではない。真希先輩達との稽古は、中々いい経験となった。
「3人じゃなかったんだ」
「あぁ、今は海外だ。階級は特級で五条先生と一緒だ」
特級…そんなに強い人が1個上の先輩だなんて。
「すごい、びっくり」
思わず感心してしまう。1度会ってみたいかも。
「というか俺は、お前があの特級呪術師の九十九由基の知り合いだったことの方がよっぽど驚いたけどな」
伏黒はそう言って私を見る。
「九十九由基?それって前名前が話してた人よね」
野薔薇も私と同様疲弊しており、先程まで黙っていたのだが気になったのか会話に入ってきた。

「私の知り合いっていうか、お母さんの友達だったみたい。会ったのは葬式の時の1度きりだし…、あの時はそんなすごい人だなんて思わなかったよ」
本当に、呪術高専へ来てから彼女がどれ程すごい人なのか知った。そりゃ西園寺も軽率に手を出せない訳だ。
ただ、向こうとしては面白くないだろう。
この世界の上の人達は腐ってるし、私のせいで彼女に何か迷惑をかけていないか心配だった。
特級だし、今は海外にいると聞いているので問題はないかもしれないけど。
「でもそうだね。私の恩人には変わらないから、いつかまた会えたらお礼が言いたいな」
大きくなった今、彼女から父と母の話を聞きたいと思った。



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