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男女と一人称

2018.02.17.Saturday


 そもそも一人称に「性別」の概念はあるのかどうか。
 いや、あるだろ、何言ってんの、と言う方にちょっと質問したいんですけど。
 私という一人称は、女のものですか、男のものですか。
 いや、批判してません。
 自分自身も「私なんだから女だろ」と思っていたけど、男も公的な場では私と言うんですよ、自分のことを。これって私という一人称が女性性を強調するものではないという何よりの根拠になりませんかね。

 私は二十代前半まで自分の一人称に悩んでもがいて、眉間にふっかいシワ作って唸っておりました。
 私という一人称を「女性のもの」だと思い込んでいたからです。
 一般的に女性といわれる方々と、自分。この両者の間に深い溝があったんです。趣味趣向、価値観、体格、一般的に女性が興味を示し好きだと思うものへの嫌悪感。色々。
 一般的な女性とは程遠い自分が、一般的な女性が使う一人称を使っていいものか。というよく分からん悩みで唸っていたのです。「私」という言葉に物凄く女の人っぽさを感じていた頃のこと。だから「自分」とか「うち」とか言おうとしてました。自分は今でも使います。

 あるとき、ふと思いました。ぶっちゃけ一人称に性別なんてあるの? と。めちゃくちゃ悩んで出した答えは「ない」。
 俺、僕、拙者、某、おいら、俺っち、俺様、朕、麻呂。男が使うとされる一人称(日常生活で使うかはこの際無視)ですが、何故「男が使うもの」とされているのでしょうか。
 時代ですね。
 女性は家を守り、男性は社会に進出して働く、という時代があったからですね。
 だと思ってます。勝手に。
 平成時代のことは置いておいてください。江戸時代とか、それ以前を想像しておいてください。その頃は男性が外で働き女性が家の中にいるというのが常識でした。
 働くのは男です。社会的な上下関係に気を使わなければいけない立場なのは男でした。
 目上を相手にするとき、対等な立場の相手に話すとき、目下を相手に喋るとき、上下関係に気を使って「自分自身を呼ぶ記号」を変える必要があったのは男性の方が多かったのでは。
 俺、僕、拙者、俺様、余。この一人称は性別ではなく、謙譲語か尊大語か、社会的に上か下かを表すものだったのではないでしょうか。
 昔々、それを頻繁に使うのは男性のほうだったので、その名残で平成の今も「男の一人称」と認識されているのでは、と思ったんです。
 社会に進出して上下関係に気を使わなければいけない人の記号。それが「男性が使う」とされる一人称だったのでは。その中にはもちろん「私」も入っているでしょう。「私」も周囲の人間に対して自分の立ち位置を表す呼び方ですし。

 例外的に「わっち」「あちき」という遊郭で働く女性専用みたいな一人称がありますが、何故この一人称が生まれたかというと、お里の訛りを出さないように、という理由からです。お里の訛りで「オラ」「わし」と自分を呼ぶ女性もいたからですね。
 他には「わらわ」ですかね。これ、女性版の「拙者」みたいな立ち位置の一人称ですよね、本当は。これはたぶん「拙者」と言う男性の言葉に付随した、「外で働く男性と家にいる女性が同じ一人称を使うべきではない」という当時ナチュラルにあった男尊女卑思考から生まれたものじゃないかと思ってますが、本当のところどうなのか。調べてない。学がないとこういう時困る。男尊女卑とか言ってますけど、女性も納得の上だっただろうし、そこまで差別的ではなかったのではとか色々思うところが……保留。
 これくらいですか、珍しく性別的要素がくっついた一人称。どちらも女性が使うためのものだという共通点がありますね。「わらわ」って「妾」と書いたり「童」と書いたりするようなので、女性の立場が男性の下だったことがよく分かるなとか思ってます。やっぱり社会的な記号だったのかな。

 えーと、纏めますと、一人称というものは自分を呼ぶための記号なので、周囲に対しての立場や地位はあれど、性別という要素はあんまりない、ということになります。
 持論です。
 つまり男性が自分を私と呼ぼうが、女性が自分を僕と呼ぼうが、別に変ではないという事……ですかね。
「だから女性が男のものとされる一人称を使っても許してくれ」
 と言っているわけではないです。
 むしろ
「男ぶりたくてその一人称を使っている方には悪いですが、無駄な努力です」
 と言っています。
 だって一人称に性別的な要素なんかないんだもん。
「私、あたしでは自分の個性や性格を現すのに適さないから別の一人称を使っている女性がいる」
「そういう女性は改まった場所ではきちんと“私”“わたくし”と使えるのでプライベートな部分で何やかや言うのは許してほしい」
 とは思っています。

 っていうね、二十代前半まですっごく悩んで眉間のシワが谷折りくらいになってた自分が導き出した一つの可能性。
 持論なので真に受けなくていいですよ。
 余計なこと言うと、「私」が女を強調する一人称なわけじゃないと持論をはじき出した瞬間気が楽になってガンガン「私」と言い始めたのが私です。私です。
 おわり。

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