狼の花は今日も散る | ナノ

の花は今日も散る

一室にて(*年後)*

「う……っ、く……」

 “いらない子”な私が変わるためにも、“大人”になるためにも、必要なことなんだと彼は言った。

『…………え……?』
 いつもなら優しくキスをするくらい。ベッドと彼に挟まれることは何度もあった。でもその日からは変わった。
 ワイシャツのボタンを全て外すように言われた。早くと急かされボタンに手をかけた。
 それまでにも、身体に触れることはあった。でも、"恋人"だからと教えてもらったので受け入れていた。
 その日は、今までと少し違った。だから、自分には感情はないはずなのに、急に怖くなった。"恋人"なのだから、それをすることは間違ってないらしいが、それでも恐怖を感じた。
 痛い、苦しい。自分の未熟な部分に彼の手が伸びてきた。優しい言葉を掛けてくれているのに、とても恐ろしく思えた。
 でも、その恐ろしさの後に感じた、初めて知る“気持ち良さ”。
『君が、今日の誕生日を迎えるまでは我慢しようと、そう自分で決めていたんだ』
 私は、ずっとそのために彼の傍に置かれていたのだろうか。あの日の彼は、自らの手で熟成させた肉を、いざ食らおうとする獣のようにも見えた。

「……何で今日は、何も言って……くれないんですか……?」

 "恋人"という特別な関係性に浮かれるこどもの私を、本当に愛してくれているのだろうか。私はどうしてもどこかで、後ろ向きな考えを持ってしまう。
 でも捨てられたくない。必要とされたい。私にはこの人しかいないんだ。

「あっ! や……、耳、はっ……」

 ちょっとくらい胸が痛くても、それは私が我慢すれば良いだけ。彼が"喜ぶ"……? のなら、それで良いんだ。

「もう……いれて……、ッ」

 例え、そこに本当の愛情はなかったとしても。

「……はい、“幸せ”……です……」

 “幸せ”というものが、これで合っているのか分からなくても。
 今日も私は、求められれば服を脱ぎ、肌を晒し、体液に濡れながら浅ましく鳴くのだろう。

 私が、こんな犠牲的で淫らな生き物だと知ったら、君はどう思うのだろうか。 

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