『聖晶石が溜まったから、十連召喚をします!みんな俺に運を分けてくれー!』
そう朝方の食堂で気合が入った叫びをあげていたマスター。
散々たる結果だった前回の三十連召喚の時、マスターは布団の中でいじけていたらしい。そして今回の十連といえば。にこりと笑いながら駆け寄ってくる彼を見れば分かる、どうやら今回は上手くいったようだ。喜ばしい限りである。

「ケイローン先生!是非貴方に会わせたい人がいます!」

どうやら召喚された仲間は私に縁があるようで、マスターはわくわくとした表情を隠さずに喜色満面な様子。私も生前は顔が広い方だったが召喚を終えたばかりであろうマスターがこのように勧めてくるということはよっぽどの知己だろう。直ぐに思い浮かぶ顔は幾つかあるが、さて誰だろうか。

「なるほど。マスターの言う会わせたい人というのはお前だったんだな、ケイローン」

全身の機能という機能が一瞬にして全停止された。悠々と口元の右側を吊り上げて笑うのは、間違いなく「……先生?」遠い昔に無くした戦慄き声が蘇る。

「今はケイローンが先輩になるな。色々と教えてくれると助かる」

そんな。先生の先達だなんてそんな恐れ多い、私はまだ貴方に教わりたいことが、教わるべきことが数えきれないほどあるというのに。脳裏に過る言葉の数々は間違いなく本心だった。寸でのところで残っている理性は怒鳴っている、カルデアでの生活を教えるというそれだけの行為を求められただけで何をそんなに、と。
たったそれだけだというのに。

「……ケイローン?」
「ケイローン先生?どうしたの?」

マスターや、先生すら、少しばかり意識の外に追いやられる。
私を構成する全てが歓喜で溢れていた。
やっと。ようやっとだ。

嗚呼やっと先生のお役にたてる。

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