パンクラチオンを教えてほしいと神父天草に頼まれたので、特に断る理由もなく頷いた。シミュレーターをお借りして場を整えていたら何処からか話が漏れたのか他のサーヴァントたちが見学に来たり、自分にも教えてほしいと言ってきたりとちょっとした大所帯だ。
俺で良いのなら俺が出来る限りのことはやらせてもらうが、俺は別に教えるのが上手いわけではない。弟子のケイローンの印象がよっぽど強いのだろう。

「中々筋が良いな、天草」
「貴方に褒められると自信がつきますね」
「飲み込みも良いし教えていて面白いぞ」

ケイローンに教えていた時の頃を思い出す。いやあ、彼奴は本当に教え甲斐のあるようなないような、与えたことは例外なくスポンジのようにどんどん吸収していく生意気な弟子だった。
ケイローンの事を思い出していたからか、相手は天草だというのについ頭を撫でてしまう。気付けば目を丸くした天草が俺を見つめている。

「ああすまん、ついやってしまった」
「驚きはしましたが大丈夫ですよ、驚きましたが」
「二度も言うべきことかそれは。……意外だな、慣れていないのか?」

頭から手を放すと、そこには困ったように眉を下げながら恥ずかしそうにはにかんでいる天草がいた。

「幼い頃に撫でてもらった程度のものでしょう、普通。されるだなんて夢にも思いませんでしたし」

そうか?おや、そうだっただろうか。……いや確かに俺の場合はそうだったな。ケイローンには結構な頻度で褒め言葉と共に頭を撫でていたからすっかり忘れていた。
直後にジャック・ザ・リッパーが自分も撫でてほしいとやってきたのを皮切りに、サーヴァント達が群がってパンクラチオン講座が長引いていく。
夕飯が出来上がる頃になってようやっと講座が終了し、肩の力を抜いた。

「お疲れ様でした、先生」
「ああ、ケイローンもお疲れ」

人数の多さから途中で手伝ってくれたケイローン。彼の顔をじっと観察すれば何故自分が見られているのか理解できないらしく首を傾げられる。
俺よりもよっぽど出来た先生だというのに、所々で小さい頃の面影が表に出てくるな。
「手伝ってくれてありがとう」そう言いながら頭を撫でれば、途端に狼狽して明後日の方に視線が向いた。
本当、何故こんなにも俺を好いてくれるんだろうな、ケイローンは。

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