毛繕いをする。そしてその相手はペットや家畜でなく弟子兼恋人という複雑な関係の男だ。
胴体の馬にあたる部分は勿論、頭部の髪も手作りの櫛ですいすいっと梳く。
シャンプーやトリートメントなんて神話時代には無いと思っていたが、同じ名称ではないだけで同じ役割を担っている道具は存在していたので、紀元前であるにも関わらずケイローンの毛並みはさらさらと綺麗である。

「痒いところはあるか?」
「いいえ、いいえ、気持ちがいいです、とても」
「そうか」

草の上に寝転がり、うとうととしているケイローンに時折声をかけながら毛繕いを進めていく。櫛がひっかかる事は殆どなく、順調だ。
太陽の光を浴びて輝き、偶に吹く風によって左右に揺れる髪を様を見つめるだけの時間。

「毛繕いをするこの瞬間が俺の密かな楽しみだと言えば、お前は笑うか?」

ケイローンの身体がぴくりと動いた。もぞもぞと上半身を捻じり俺と目を合わせたケイローンは、熱を孕んだ目を細め微笑む。

「私は、先生に身を預けるこの瞬間が永遠に続けば良いと思っています」

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