▼シャンデラのおはなし
2013/12/16 07:18


※雰囲気小説
※ポケモンの死ネタ含みます
※なんていうか行間万歳
※追記にすっごい言い訳はじめる








蒼と紫の混じった炎が美しい
それは触れてはならないほど

捕えてはいけないのだ
禁断のモノだからこそ

これは綺麗に煌くのだから



「ヒトモシ乱獲事件、…あなたは知ってる?」

何もない休日
誰もいないホーム
落ちていた新聞を拾い上げ、その先にいた彼女を見た

揺らめく炎が僅かに強まる
金色の瞳にもその炎は乗り移った

「知っているよね。だからあなたはここにいる。ノボリさんでもクダリさんでもない、私を頼ってここにいる。あなたは優しい。忙しい2人にその怒りをぶつけない。あなたは厳しい。内に秘めた炎を完全に消し去ることができない。あなたは、…私と同じことを考えている。同じことを望んでいる」

どちらからともなく腕を伸ばした
女性にしては少し硬い私の腕と
滑らかな黒い腕が結び合う

「シャンデラ、私と行こう。今この時だけ私はあなたのあなたは私のパートナーになろう」

あなたは優しい
その責任を自分の所為だと思っている

あなたは寂しい
おかえりという場を失うことを恐れている

私は手にしていた新聞を丸めてゴミ箱に投げ捨てた
勢いよく投げた所為かとてもうるさい音がホームに鳴り響く

「私は、怒っている。あなたと同じように」

強いポケモン、弱いポケモン
そんなの人の勝手
そう、本当に人の勝手

私達は無言のままホームに滑り込んできたトレインへ乗り込んだ
道中も言葉は交わさない
隣に並んで座って瞳を閉じる

「シャンデラ」

その沈黙を破って私が名前を呼ぶと、彼女は此方を向いた
驚きも問いかけもない瞳はこれ以上喋らなくても意味を理解しているように見えた
だから私はもう1度口をつぐみ、ゆっくりと目を閉じた

乗り継ぎを繰り返し、辿り着いた場所はひっそりと静まり返っていた
フキヨセから向かう途中トレーナーに呼び止められた

「今あそこに行くのはやめておきなよ」

野生のヒトモシが多く捕まえられているんだ
その人数は日に日に増えている
彼らは見境ないよ
もう野生だろうと手持ちだろうと好き勝手さ
ぼくのヒトモシも盗られてしまった
きみのそのシャンデラだって

「忠告ありがとう」

私が頭を下げると彼はほっとした顔をみせた
自分が盗られた苦しみを他人に味わわせたくないのだろう

彼は優しい
でもそれは臆病にも等しい

「心配要らない。私、怒っているから」

彼の返事は聞かずに草を掻き分けた
タワーはいつも以上に静かだ
灯りを頼りに中に入る


何も来ない


それは誰もいないわけではなく
居るのに来ない
窺うようなねっとりとした視線

「あの子達じゃない。それが分からないほどバカじゃない」

お墓の後ろからヒトモシはよく人間を窺う
怖がっていたり面白がっていたり様々だ
だけどこんな視線じゃない

「あなた達はそうやって奪ってきたの?暗闇の中から襲って、分別もつかず。捕まえた子の育て方も知らないのに。知ろうともしないのに。あなた達が本当に欲しがっているモノなんて、絶対に手には入らない!」

反響する声に紛れて音がした
私に向かって大勢の人間が襲い掛かる

「私は絶対に許さない」

腕を上げる
呼応して黒い腕も上がる
炎はいっそう激しさを増す

蒼く紫色に光る炎が周囲を漂う
本来ならば火傷ぐらいで済む可愛いモノ
悲鳴がそこらから聞こえる

「いったいどれだけ苦しめたの?どうして強くもないあなた達が一方的に強さを求めるの?弱い、強いだなんて私達は知らない。私達には関係ない。許さない、絶対に許さない」
「ま、まってくれ!俺達はただ金になるから…」


それが 謝罪に なると で も ?


数の暴力は虚しい
誇れるのはただひとつだけだから

蹲る人間の傍にボールがいくつも転がっていた
ひとつひとつ解除していく

驚いて辺りを見渡すもの
泣きながら逃げていくもの
お礼を述べて寄り添うもの
傷だらけでそれどころじゃないもの

転がる人間達は縛り上げて外へ放り投げた
直に警察が来て連れて行かれるだろう
私は階段を上って鐘がある最上階まで行った

強く、鐘を鳴らす

勢いのある風が流れ込んで纏わりついた
澄んだ鐘の音と風が弾けるように広がる

私はゆっくりと目を開けた

「……お疲れ様」
「シャァ―――ン…」
「いいよ、ゆっくりお休み。ありがとう、また会いに来てね。今度もまた、シャンデラとして」

さよなら、そう呟く頃に彼女はいなくなっていた
私は階段を駆け下りとあるお墓の前に行く
そこにはヒトモシが沢山集まって泣いていた

私もつられて泣いた
あなたは心配だったのだ
あなたは自分を責めていたのだ

強いと持て囃された自分の所為で
同胞が傷付けられるのが我慢できなかったんだ
だからあなたは私の所に来た



もう体を持たないあなたには、私を使うしか術がなかったから







ヒトモシ乱獲事件、知ってる?

昔ね、とっても強いシャンデラがいたの!

先代のサブウェイマスターのシャンデラなんだって

あまりにも強かったから皆ヒトモシを捕まえたの

でもね、強いのはほんの一握り

要らない子達は虐められていたんだって

強い子達は奪い合いになってたよ

それが酷くなってサブウェイマスターさんの所為だって

文句を言う人まで出てきちゃった


「へー。で、どうなったの?」


ある人がね、やっつけたの!

あっでも人じゃないかもしれない


「どういうこと?」


犯人はね、タワーの前で縛り上げられてたの

うわ言しか言わないから嘘かもしれないけど

シャンデラがいたから捕まえようとしたら

女の人に化けてやられたんだって

サイコキネシス、おにび、オーバーヒート

シャンデラみたいに技を使ってくるの


「ふーん、幻覚かぁ」


紫色の髪の毛に蒼い瞳で

まるでシャンデラの炎みたいだって!



「そのシャンデラはどうなったの?」


しらなーい!

でもお墓はあるみたいだよ!

あのね、でも変なんだぁ

だって強いシャンデラがしんだのはその事件の10年も前

犯人達はおばけにやられたのかな


「そうだね、あっお母さん来たよ」


ほんとうだ、お母さん!

ばいばい白色のおにいさん!


「うん、ばいばい」





「さて、おばけさんに会いに行ってこようかな」



シャンデラ いざないポケモン

たましいを すいとって もやす
ほのおを ゆらして あいてを さいみんじょうたいに する





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▼追記
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