2010/12/03 転生シリーズ(久々知SS・後)
女の子の名前は「藤宮 真由美」
従姉妹は「伊織」で固定です








何を着て行こうとか、どんな話をしようとか、考える事は色々あったけど、日曜日はあっという間に来た。
待ち合わせ場所で会った久々知くんはやっぱり目を引く存在で、かっこよかった。

「おはよう、藤宮さん」
「おはよう久々知くん。久々知くんって、私服もかっこいいね」
「そうかな?ありがとう、藤宮さんも、その…可愛いよ」

照れた表情で褒められたことが、純粋に嬉しかった。

私…本当にこの人を好きになってもいいのかな。
前世ではあんなことがあったけど、彼は今本気で私を好きになってくれている。
私は彼を信用していいのだろうか。

映画を見て、軽く食事を済ませ、ついでに買い物もした帰り道。
私は思い切って久々知くんに聞いてみた。

「ねぇ、久々知くん。どうして私のことを好きになったの?」

久々知くんは一瞬ピシリと固まったけど、視線をうろうろさせながら答えてくれた。

「実は、高校に入る前に一度、藤宮さんを見たことがあるんだ」
「え?」
「中学の時、部長の試合を応援に来てたことがあったよね?俺は中学から弓道をやってたから、受験前に一度、大会の見学に来たことがあるんだ。その時に部長を応援している藤宮さんを見て…」
「………」
「最初は従姉妹だなんて知らないから、熱心に友達を応援してるなって。凄い、印象的だったんだ。…可愛かったし」
「かわっ!?」
「あ、ごめん。でも本当のことだから」

久々知くんの言葉に動揺していると、久々知くんは表情を緩ませて笑った。

「久々知くん…私のことからかって遊んでない?」
「そんなことないよ」
「じゃぁもう笑わないでよ。私、もう恥ずかし過ぎて――」


「藤宮さん!!」


「え?」


突然、腕を強く引かれたと思ったら、久々知くんの腕の中にいた。後ろを風が音を立てて通った。
一体何が…

「久々知くん…」
「良かった…!もうちょっとで、藤宮さんが…」
「…もしかして私、危なかったの?」

きつく私を抱きしめる久々知くんの腕の隙間から信号を見れば、赤い表示だった。
私…赤信号で渡ろうとしてたんだ。
会話に夢中になって、気付かないまま…。

「怖かった…」

ぼそり、と久々知くんが耳元で囁いた。

「藤宮さんが、死んじゃうんじゃないかって…生きた心地がしなかったよ」
「久々知くん…」
「気をつけて。俺、本当に心配したんだから…」
「うん、ごめんね」

まさか、自分が不注意で事故を起こしかけるとは思わなかった。
でも、それ以上に私が驚いたこと。
それは、久々知くんが私を助けたということだ。

どうして…、彼は、そうすることを、本当に望んでくれたのかな…

「私…死ななくて、良かったの?」

独り言のように呟いたら、久々知くんがぎょっとした顔をして私の体を離したけど、すぐに怒った表情になって叫んだ。

「当たり前だろ!何でそんなことを言うんだ!」
「久々知くん…」
「世の中に、死んでいい人間なんていない。でも俺はそれ以上に、藤宮さんが死ぬのは嫌だ…絶対に死なせたくない!!」
「っ、くくちく…」
「頼むから、そんなことを言わないでくれよ…藤宮さん」

ごめんね、ごめんね…。

久々知くんの声は泣きそうだった。真剣だった。
私はそんな彼に対して、試すような事を言ってしまって後悔した。
彼は本当に私を好いている。そして、大切にしてくれようとしているのだ。
だから私も、自分の気持ちに…‘今の’私に素直になろうと思った。

「久々知くん、ごめんね…助けてくれて、ありがとう」
「藤宮さん…」
「私も、久々知くんの側で、生きていきたいよ。だから、久々知くんも絶対に、死なないで」

いつ命を落とすかわからない、あの時代とは違う――
けれど、人はいつか死ぬということは、いつだって変わらないから。
今のあなたが私に生きて欲しいと願ってくれるなら、それだけで私は幸せだ。

久々知くんは私の言葉に一瞬驚いた顔を見せたあと、表情をくしゃりと歪めて、破顔した。

「約束するよ。一緒に、生きるって」

だから、私はもう彼を怨んではいない。


※※※※※※※※※

いけるかな〜無理かな〜?でやっぱり文字数オーバー。
久々知編でした。
今回会話文が多かったですねぇ…愛憎は表裏一体ってやつですか。
ちなみに私は弓道のことはわかりません。
そこはカンリたんが詳しい。

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