2010/05/30 同級生の受難(兵助SS/雷蔵視点)
名前は十六夜アキで固定




最近の兵助がそわそわしているのは、端から見てもバレバレだった。
授業中は先生の話を聞きながら、時折窓の外を眺めているし(勘右衛門談)実習中では無駄にテンションが高くて、気配を消してもすぐに見付けられてしまうし(三郎談)何より、大好きな豆腐に醤油を並々かけては嬉しそうに完食していた。

これは何かあるな、と思った僕たちが問い詰めると、兵助はキョトンとした顔で「そんなに顔に出てたか?」と言ったので、僕もハチも即効で頷いた。
すると兵助は少し顔を赤らめながら、もじもじと体を揺すった。
うわぁ、なんか見ちゃいけないものを見ちゃった気分。友達のこういうところを見る日がくるなんて、思ってもみなかったなぁ…

「実は、もうすぐ幼馴染が編入してくるんだ」
「編入って、忍術学園に?」
「あぁ」
「それって、女か?」
「そうだけど…」
「なるほどなぁ」

兵助の答えに、三郎はニヤニヤといやらしい笑いを浮かべた。
あっ、こいつまた何か悪い事考えてるな。後でちゃんと注意しとかないと。

「兵助が動揺するくらいだ、さそがし可愛い幼馴染なんだろうな」
「確かにアキは可愛いけど…三郎、アキに変なこと言うなよ」
「さて、どうだか」

何せ私は鉢屋三郎様だぞ?面白いことには首を突っ込みたいのさ。

三郎のそんな台詞を若干ムッとした表情で聞きながらも流した兵助は、委員会の仕事があるからと行ってしまった。
残された僕たちも、それぞれの目的場所に向かって散らばる。三郎は自習練しに、ハチは飼育している生き物たちの世話やり、勘右衛門は先生に用事を言い付けられていた。そして僕は、図書委員の当番だ。
図書室に通じる廊下を歩きながら、ふと先程の兵助のことを思い出した。あんなに顔を赤くしちゃって、本当に大切な幼馴染なんだな。名前は…アキさん、って言ってた。
彼女はもう兵助と恋仲なのだろうか。それとも、兵助の片思い?
どっちにしろ、兵助にあんな顔をさせる位なんだから、とっても素敵な人に違いない。僕も早く会ってみたいなぁ…

その時の僕は、兵助の幼馴染であるアキさんについて、一人であれこれと想像をしていた。理想を押し付けていたと言っても過言ではない。きっと、凄く綺麗な人だと思ってたから。

だから、兵助から話を聞いた5日後に学園にやってきたアキさんを見て、僕は言葉を失った。見れば、隣にいる三郎も目を見開いて驚いている。ハチなんか馬鹿みたいに口を開けていた。

「アキ!」
「兵助!久しぶりーっ!!」

そう言って、両手を上げた兵助の胸に飛び込んだアキさんは…僕たちの身長の半分くらいしかない、とっても小さな女の子だった。
ええええええ!何これ一体どういうこと!?

「あぁ、アキはいつ見ても可愛いな…」
「やだ、兵助だってカッコイイよ」
「抱き心地もいいし…」
「兵助、相変わらず睫毛長いね」

固まる僕たちを無視して、そこだけ桃色の空気が漂う。あの三郎ですら、頬を引き攣って「マジで…?」と言葉を漏らす。
そんな時、一人だけ冷静な勘右衛門が、爆弾発言を落とした。

「あれ、お前ら知らなかったの?あの二人、会うといつもああだぜ」

「し、知らなかった…」
「まさか友人に幼女趣味があるだなんて…」
「あいつは豆腐が全てだと信じて疑わなかった…」

上から僕、ハチ、三郎の順に言葉を零して脱力する。えぇと、何だこれ。僕たちこれからどうしたらいいの?

そんな力を無くした僕たちの前で、アキさんはにこっと笑って挨拶をした。

「はじめまして、兵助の幼馴染で、十六夜アキっていいます!」

「よろしく…鉢屋三郎だ」
「僕は不破雷蔵」
「竹谷八佐ヱ門、だ」
「あ、俺のことはいいよね。前に何度か会ってるし」
「はい!尾浜勘右衛門くんですよね!」

紹介されたら、一応僕たちも自分たちの名を名乗る。アキさん…アキちゃんは、それはもう、にこにことした顔で僕らを見ていた。
とりあえず兵助。挨拶している時は下ろしてあげなよ…いつまで抱っこしてるの。もしかして、ずっとそのままでいるつもりじゃないだろうね?

「そうだ、アキ。学園長先生のところに挨拶に行った?」
「ううん、まだ」
「じゃぁ一緒に行こうか。案内する」

そう言って、兵助はアキちゃんを抱っこしたまま歩き出した。僕たちには、またな、なんて短い言葉を残して。
その後ろ姿を見送っていると、横にいた三郎がポツリと言葉を零した。

「あいつ…豆腐にしか目がないと思ったら、とんでもない趣味持ってたんだな」

仮にも友人である兵助に対し、あんまりの言いようだった。でも、この時ばかりは僕も否定しなかった。
だって、どう見てもそうとしか思えなかったんだもん…今年で15になる兵助と、まだ10でしかないアキちゃんを見てると。

これから、毎日のようにあの兵助を見なくちゃいけないのかと思うと、僕の体は力が入らなかった。



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拍手お礼にもならないSS
気が向いたら続き書くかも
だけど書いててめっちゃ楽しい!(^o^)


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