2010/07/09 白雪姫パロ(久々知SS)
名前はアスカです





昔々、豆腐のように肌の白いお姫様がいました。
周りからは白雪姫と呼ばれ、心優しいお姫様は愛される存在でした。

ある時、お姫様に継母ができました。

「おい、白雪姫。豆腐ばっか食ってないで他の物も食べろ。栄養が偏るだろ」
「豆腐を否定する気ですか」
「いやいやいや、今の会話の中に否定する要素なんてなかっただろ!」
「二人とも、喧嘩しないで」
「雷蔵、俺はこんな継母認めないからな!」
「え!?そんな、それは困るよ…だって…うーん!」
「雷蔵!?」
「また迷い癖が出た…」

頭を抱えて、ぱったりと思考を止めてしまった雷蔵に、三郎が慌てて駆け寄ります。
お姫様は黙々と豆腐を食べながら立ち上がりました。

「おい、どこに行くんだ」
「豆腐を買ってくる」
「またか!」

三郎は叫ぶと、勝手に出ていくお姫様を止めようとはしませんでした。
代わりに、従者の八左ヱ門を呼び寄せます。

「一応、見張っとけよ」
「了解」

ボサボサ頭の八左ヱ門は頷くと、お姫様の後を追いました。
しかしお姫様も中々優秀だったので、自分をつける人物がいることには気付いていました。
豆腐を理解しない三郎の従者だとわかると、さっさと撒いてしまいます。

「あ…れぇ!?」

八左ヱ門はお姫様を見失い、いつの間にか動物たちに囲まれていました。
動物が大好きな八左ヱ門にとってそこはパラダイスで、すっかりお姫様の後を追う事を忘れてしまったのです。

一方、豆腐を買いに来たお姫様は、行きつけの豆腐屋で愚痴を零していました。

「勘ちゃん、聞いてよ。三郎の奴が…」
「はいはい、また何かあったんだね。とりあえずこれ食べて落ち着いて?新作の豆腐だよ」
「ありがとう!!」

お姫様を宥めるのは、豆腐屋の主人で、小人の勘右衛門です。
二人は客の来ない庭先で話しながら、遅くまでそこにいました。

「わ!もうこんな時間!」
「今から帰るのも大変だし、今日はもう泊まっていったら?」
「そうするよ」

お姫様は勘右衛門の家に泊まりました。
翌日、お城に帰ろうか迷いましたが、やはりお姫様には豆腐屋の方が居心地が良く、しばらく厄介になることにしました。

「兵助、豆腐食べるのはいいけど、暇だったら手伝ってよ」
「待って、今豆腐と語り合うので忙しい」
「三郎の気持ちがわかるなぁ…」
「うふふ、そーなのか。え?湯豆腐になりたい?待っててな」

豆腐を前に表情を緩ませるお姫様を見て、さすがの勘右衛門も呆れてため息を吐きました。
するとその時、誰かが小人の豆腐屋にやってきます。

「ただいまー」
「あ、アスカ」
「久しぶり、勘右衛門。元気だった?」
「うん。そっちは?」
「私も、上々よ」

そう言って笑ったのは、勘右衛門の従姉妹で同じ豆腐屋を営む、パートナーのアスカでした。
アスカは豆腐を売りながら各地を歩き回り、より美味しい究極の豆腐を作る修業をしていました。
今回もその旅から帰ってきたのでしょう。
手には黄金の豆腐を携えています。

「これ、ちょっと味見してみない?」
「じゃぁ一口…」
「勘ちゃん、その豆腐何?」
「え?アスカが作った豆腐だけど…ってあぁ!?」

勘右衛門が説明するや否や、お姫様はさっと豆腐を奪い、食べてしまいました。
その途端、お姫様の体が固まります。

「え!?何、豆腐に毒でもいれた!?」
「まさか!そんなことしてないよ!」
「でも兵助が…!」

慌てる二人をよそに、お姫様はポロリと涙を零しました。

「美味い…」
「「!?」」
「こんなに美味い豆腐、初めてだ…」
「よ…良かったぁ、死ぬほど口に合わなかったのかと…」
「逆だよ!俺はこんなに美味い豆腐、今までに食べたことがない!勘ちゃんが作った豆腐より美味い!」
「兵助…それは何か傷つくな…」
「アスカって言ったよな…俺と結婚してくれ!!」
「「えぇぇぇぇ!?」」
「君が作った豆腐料理を毎日食べたい!!」

お姫様からの突然のプロポーズに、アスカも勘右衛門も固まってしまいます。
まさか豆腐一つで求婚されるとは思っていなかったのですから。

「俺、お姫様だから不自由な生活はさせないよ!だから…」
「ちょっと待って、仮にそうだとしても、そんな急に…」
「物語にはスピードが重要なんだ!豆腐が美味い人と出会えた、はい結婚」
「いや、それおかしいと思うよ?兵助の理論」
「勘ちゃんは黙ってて!」
「酷い…」

お姫様は尚も熱烈なプロポーズを繰り返しました。
最初は驚くだけのアスカでしたが、次第にお姫様の熱意が伝わり、二人は結婚することになりました。

「良かった!これで毎日最高の豆腐料理が食べれる…!」
「兵助が欲しいのは豆腐だけ?」
「そんなことないよ!俺の為に毎日豆腐料理を作ってくれる、優しいアスカが好きだよ!」
「…そ」

アスカは恥ずかしかったのか、少し顔を反らし返事をしました。
それからお姫様とアスカは城に戻り、結婚式をさっさと挙げてしまうと、雷蔵と三郎はポカンとしてしまいました。

「お前、しばらく帰ってこなかったと思ったら、急に結婚だと!?」
「煩い三郎」
「兵助!」
「まぁまぁ、落ち着いて二人とも。でも、良かったじゃない、兵助にもようやくいい人が見付かって」
「だが雷蔵…!」
「僕はいいと思うよ?アスカさんのこと。末永く、幸せにね」
「ありがとう雷蔵」
「いやいやいや、何か無理矢理繋げようとしてないか!?雷蔵はここで反対するべきだろう!」
「「三郎煩い」」

「すみませんでした…」

その頃、何も知らない八左ヱ門は、豆腐屋の近くで動物たちと戯れ、幸せに暮らしてたとさ。
めでたし、めでたし。


※※※※※※※※※

もはや何も言うまい…。

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