その13


ぷに、ぷに、ぷにぷにぷに。何かに頬を押されている感覚でぼんやりと意識が浮上してくる。しかしまだアラームは鳴っていない。まだ起きたくないという意思も込めて、五条はごろんと寝返りをうった。
ぷにぷに、ぷにぷにぷにぷに。五条の頬への攻撃は続いていた。頭に微かに感じるモフモフといい、頬をつついてくるこの感じといい、あの特級仮想怨霊に違いない。五条は一言言ってやろうと勢い良く身を起こし、口を開いた。

「え、」

ニャォン。暫くの間沈黙が続き、五条はその間開いた口を元に戻すことが出来なかった。犯人が特級仮想怨霊では無く、この金色に染る毛を持った見たことも無い猫だったからである。ニャァ、ニャァ、ニャォ。鳴き続けているその猫は何かを必死に伝えているようにも見えた。その時五条はハッと気づいた。隣で寝ているはずの名前の姿が無い事に。ニャァ!ニャア!金色の毛に、赤い瞳の猫、そして姿が見えない名前。五条はある一つの疑念を抱いた。

「もしかしてお前、名前なの?」





「はーい!今日も元気に授業始めるよー!!」

朝からうざったい担任にはもう慣れてはいたが、その腕に抱えられた生き物を見て数少ない生徒達はギョッとした。これは今までにない新しいパターンだ。

「え!?先生、その猫どうしたの!?拾ったの?」
「あんた馬鹿なの?この学校に野良猫なんかいるわけないでしょう!?」
「あー、それもそっか!」

キャイキャイと騒がしい虎杖と釘崎の横で伏黒は一人冷静だった。「さて!今日の授業は」へらへらと笑いながら何事も無かったかのように進め出す五条に釘崎からのキレのいい突っ込みが入り、そこにまた虎杖も加わり始める。伏黒は、五条の腕から抜け出してフラフラと教室の中を歩き始めた猫をじっと見つめた。どこかで見たような気がする、そのモヤモヤを晴らしたい。当の猫は窓の傍の日向を見つけるとくるりと器用に尻尾をまるめ、自身もまた丸くなった。
なんとなく、ここまででかかっているのに…。伏黒は考え込む。この猫は絶対にただの猫なはずがない、だからといって呪霊の類でもなさそうだ。猫、猫…金色…猫。そして伏黒は閃いた。猫に呪われており、自身も猫のような、金髪の彼を。

「じゃあ恵、答えて」

伏黒がハッと顔を上げた先、教卓の上で五条が笑みを浮かべながらこちらを指さしていた。隣からもグサグサと視線を感じている。

「すみません、聞いてませんでした」

しん、と静まり返った教室。ニュワァ。猫が大きくあくびをした。





よくある猫ネタ。





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