蛇足

夢主
能天気なようでひとりで抱え込むタイプ。
前世の記憶が戻る前から、兄にたいする感情には家族愛や兄妹愛といった親愛に、ちょっとだけ無自覚の淡い恋心が混ざっていたが気付いていないしこれからも気付く事はない。
記憶は遠い過去のようにどこか他人事の感覚なので、思考は兎も角、人格や口調へは特に影響を与える事はなかった。
タワートップでのあれは、自己犠牲するつもりは更々なかったのだが結果的にああなってしまった。
目下の疑問は、婚約指輪を贈られたものの自分が結婚できる年齢になるまでに他に好きな人が出来たらどうするんだろう?というものだが杞憂過ぎる事にも、前提としてそこに自分の事をいれていないアレにも気が付いていない。
なお、また余計な事を考えているなと追い詰められ白状させられた挙句に、オレの愛が伝わっていなくて悲しいぜ、いや、オレの責任だな…よし!お前がそんな事を考えなくなるまでオレは頑張ろう!と、イイ笑顔で頑張られた結果、骨の髄まで思い知らされた。何をどう頑張られたのかはとても人には言えない。


ダンデ
血の繋がらない妹の事は実の弟同様大切にしていたが、ある日幼い妹からちっちゃい身体の全てでぶつけられた感情に一撃で戦闘不能にされた気分だったし、流す涙に見惚れてしまって反応が遅れた。正直ずっと見ていたかったが、まだ若く青かったのと兄という意識が強かったためちゃんと慰める選択肢をとった。成長してからは自身の性癖を正しく理解したのでうっとり愛でている。
実は呼び名はどうでもいいし、妹のままでもよかったのも事実とはいえ、それだと何れ夢主が他に好きな男を見つけて家を出て、自分の元からも離れてしまうので、それなら自分の番にすれば何も問題はないな!と思い立った結果。どんなに高い壁が聳えようとも彼が足を止める理由にはならない。
普段掌の上でころっころ転がってくれる夢主が、けれど稀に予想外の事をしてくるのが楽しくて嬉しくて仕方がない。……ただしタワートップでの予想外だけはしてほしくなかったんだぜ。
夢主にはああ言ったものの、それとこれとは別で、今後蒸し返すつもりもないが、一生許しはしないと決めている。
最後の布団のくだりは懐古であり意趣返しでもある。
夢主のアーマーガアとはファーストコンタクトはよかったのに、その後の諸々によって地味に警戒心を抱かれ続けているが気にしていない。バトルしたいんだぜ!
なお作中、一度も冗談は言っていない。


アーマーガア(♀)
草むらで餌を探しながらも、先刻から色んな同胞に逃げられているなと他人事として眺めていた。直ぐに興味も失せ餌探しに集中しているとふとさす影。バトルを挑んで捕獲しようとしてくる訳でもなく、ただそっと赤と白のボールを手に、いつかの未来に大切な人を、お兄ちゃんを一緒に守ってほしいのだと告げる人間の幼体に、何を言っているのだろうと“彼女”は思ったが、あまりにも悲痛な顔をしていたので気付けば許諾してしまった。
いいおやで、いいトレーナーで、けれど向けられる擽ったい程あたたかな愛情に紛れて、あの悲しげな色がずっとあり続けているのは知っていた。
実際に会う事はなかったが、スマホという小さな画面で見た事があるその獣の如き人間の雄は、果たして守る必要があるのかと疑問視する程には強い個体―――自分のおやよりも余程―――であり、手持ちのポケモン達も強く映ったため不思議だった。
進化を経て、自身も随分成長したと思うのに比例し、その色はより濃さを増し。
その日、大切なおやの願いを叶える事に彼女は成功した。けれど、彼女の守りたかったものは地に伏せていた―――
―――は?ちょっとご主人?は?アタシにとってはご主人のが大事なのに何で守らせてくれない訳?ご主人そーゆーとこあるの忘れてたってか信じたアタシがバカだったわ…。ご飯?繊細な乙女心が傷付いてるのよ?食べられる訳ないじゃない?……まあ、ご主人も無事に起きたしちゃんとアタシの気持ち分かってくれたからイイケド…撫で撫でサイコー!って大事な話とか言うからシリアスな雰囲気に任せたのに、なにご主人泣かせてくれちゃってる訳?もー!ご主人この雄やめた方がいいって!幾ら強い個体だとしても駄目な雄の気配がぷんぷんするわ…地雷よ地雷。次にご主人泣かせたら絶対突つくんだからね!
性格/おっとり、とは。


ホップ
幼少時から、夢主が他の子供から似ていないと揶揄われると怒ってくれていた天使。
(夢主は前世の記憶が戻る前も後も特に気にしていなかった)
ジムチャレンジの旅が終わって、その後の騒動も落ち着き、色んな事がいっぱいあり過ぎたから当分何が起きても驚かなさそうなんだぞ、と思っていたら双子の妹は血が繋がっていなかったうえに、兄と恋人同士になったと聞いてとてもびっくりした。
でも二人が幸せそうだからいいんだぞ!
でもまだいちゃついてる所を見るのは慣れないんだぞ…。


ユウリ
夢主とは普通に仲良しなので、夢主と元チャンピオンの事を知っても、きゃー!ドラマみたい!ときゃいきゃい祝ってくれる。


お母さん
親族のいない、事故死した友人夫婦の子供であった夢主を引き取り育ててくれた。
うちの子は皆仲がいいわねえとにこにこしていたら、ある日長男から夢主を嫁にしたいと伝えられ少し悩むも、可愛い娘が下手な男の嫁に行くよりは全然問題ないと判断した。にこにこ。


キバナ
作中、一番格好いいところを掻っ攫っていった気がするトップジムリーダーさま。
夢主の事は一応ライバルの似てない妹として顔は知っていた。
ライバルの指の輝きに、いち早く何時の間に恋人が出来たんだよお前!と軽い気持ちで訊いたらライバルの妹の名前を出されて二度訊いた。血の繋がりがない事などを知って、まあお互い幸せならいんじゃね?と祝福したが、たまに顔を合わせる夢主と喋っている時に、一緒にいるライバルの笑顔はその黄金の双眸が笑っていないと気付いてしまったため、コイツちょっとアレだとは思ってたけどだいぶアレだな?と察してしまった。
夢主にダンデの事でなんかあったら相談受けるぜ、とそっと伝えるも、後が怖そうなので大丈夫です…と乾いた笑いと共に言われ全てを察した。モテる男は察しがいい。


蛇足の蛇足→



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