「真ちゃーん」
「チッ...何なのだよマリン」
まだ人の居ないバスケットコートでアップをしていると
ニヤニヤしたマリンが近づいてきた
高尾とさっき仲良さそうに何を話していたんだ?
部室の扉の前でこっそり聞いていたからそんな事聞けないし、俺には聞く権利がまだない
「あのね真ちゃん、実は私ね....」
「その呼び方をやめるのだよ」
高尾と同じように呼ばれるのが嫌で、つい口調が強くなってしまう。
「あぁごめんごめん。あのね、私今日のおは朝見たんだけど、しん.....緑間、ラッキーアイテム知りたい?」
「!!」
今日はエイプリルフールだ。
俺がおは朝を見忘れたなんて、嘘に決まっているだろう....
だが、今日1日マリンを騙すのも良いかもしれない
「あぁ、教えてくれ」
「ふふっ。あのね、緑間の今日のラッキーアイテムは、これです!」
「は?」
マリンの手にあったのは、マリンがいつも首に着けている、ハートのネックレスだった
もしかしてマリンは俺を騙そうとしてるのか....
「ね、ハートのネックレスらしいから、これ着けて良いよ!絶対似合うから!」
明らかに笑いをこらえながら言うマリンの後ろで、高尾が扉に隠れながら見ているのがわかる
「今日の俺のラッキーアイテムはこれなのだよ」
「えっ?」
足元にあったエナメルバッグから黄色い熊のぬいぐるみを出す
「うっわー!真ちゃん俺らに嘘ついたのかよ!さいてーだ!」
「お前達も嘘をついただろ!最低なのはお前達なのだよ!」
「なーマリンちゃん、なんか言ってやってー!....マリンちゃん?」
「?」
俺の手にあるぬいぐるみを見つめたまま固まっているマリン
「ぷ.....プ○さんだー!」
するといきなりぬいぐるみに抱きついてきた
もちろん、ぬいぐるみを持っている俺の手も巻き込まれているわけで....
「マリンっ!は、離すのだよっ!手が胸にっ....」
「ははっ真ちゃん顔真っ赤!」
「黙れ高尾!」
「ねー真ちゃん、これ...ちょーだい?」
ぬいぐるみと俺の手を抱きしめたまま上目使いで聞いてくるマリンに、さらに顔に熱が集まる
「いっ、良いっ!やるから、離すのだよっ!」
「わぁーい!やったー!真ちゃんにプ○さん貰ったー!」
嬉しそうなマリンを見て、口角があがる
いつか、違う関係になって、違う物をプレゼントしてやって、
もっと喜んだ顔が見たい
そう思ったから
今日のラッキーアイテムを失っても、良かったと思った
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