まただ………





また、あいつに横取りされた………







周りに転がる肉の塊となった味方と、目的だったグールの死体を見て思わず唇を噛み締める







同行していた捜査官が弱いわけでも、私がポンコツだったわけでもない
ただ相手のグールがCCGの予想を上回る程強かった。
ただそれだけのこと。





そもそも、レートがA〜やS〜なんて結局何なのかわかりきっていないグール相手に通用する捜査官なんて有馬さんや0番隊、特等や庭出身者レベルの人間にしか無理だろう。
A〜って事はSSの場合もあるわけだし




そう毎回言い訳を脳内でして、「やっぱ私は殉職コースか〜」って諦めた頃、嘲笑うかのように奴はやってくるのだ。


毎回




「ねぇ、何が目的なの?」


「……………………」





目の前のグール、亜門さん曰く眼帯のグールに問いかけてみても
いつも返ってくるのは殺気の含まれない視線だけ
いつもすぐに我々の目的だったグールを殺して姿を消してしまうのだ。
毎回仲間の死んでいった中1人だけ生き残される私の身にもなってみろ!と思いながら意識を失うのがいつもの流れだったが、今日は違ったようだ





私がさっきのグール戦で赫子に脚を貫かれ、立ち上がる力すら残っていないのを知ってかゆっくり私に近寄ってくる眼帯のグール





いつものは仲間を救えずグールに助けられるという無力な捜査官として精神的攻撃で、それに飽きたから今日は私を喰うのかもしれない





目の前で奴がマスクの口元を開きながら顔を近づけるのが見えて、そっと目を閉じる





すぐに死ねると良いな





今はもう、これ以上の痛みを感じることだけにしか恐怖を抱かなかった





「っ!?」





やってくるであろう痛みがなかなかこないのでそっと目を開けると、私が目を開くのを待っていたかのようなタイミングで、奴の唇が降ってきた



私の唇に




わけがわからなくて抵抗しようとするも、奴に抱きしめられてしまってそれは叶わなかった




数分はしていたんじゃないかと思うほど長いキスから解放されて、最期に暴言でも吐いてやろうかと奴の目を見ると、
有り得ないくらい、優しい目をしていた




「無事で、良かった………」


「え………」




聞いたことの無い声だったけれど、私は何故か、昔近所に居た年下の男の子を思い出した





いつも1人で砂場にいて、何だか悲しそうに笑う子だったから、私も幼いなりに気を使って一緒に遊んであげたのが始まりだった。



それは私が中学生の時、彼のお母さんが亡くなって彼が引っ越しをするまで続いていた




いつの間にか彼への想いは同情から、自分に弟ができたくらいの感覚へ変わり、
彼の小学校でできた友達を紹介されたときは自分の事のように喜んだ





今ではもう連絡する手段が無いくらい疎遠になってしまったし、もうあの子の記憶から私は消えてしまっているだろうけど、
何で私は今、あの子のことを思い出したんだろうか




もしかしてこれが走馬灯というものなのだろうか






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