走ってやってきた高尾君の息を落ち着かせるために、2人でベンチに腰掛ける
「いきなりごめんなー?部活とか大丈夫だった?」
呼吸が落ち着いたのか、Yシャツの首元を持ってパタパタとあおぎながら聞かれて、部活という言葉に思わず反応してしまう
「あ....実は部活休んでるんだ....」
「....そっか」
あまり聞かない方が良いと、私の雰囲気で悟ったのかあまり深く追求して来なかった
さすがハイスペック
「実は俺、さ」
「うん」
前を向いたまま、真剣そうな横顔と声のトーンに、ドキッとする
「初めて会ったあの日から....ずっとマリンちゃんのこと好きだったんだ」
「えっ?」
「だから必死にメアド聞いてさ、前まではメールだけで耐えられたんだけど、最近は会いたくて会いたくって苦しくてさ、だから今日、呼んだんだ」
「......」
ゆっくりとこちらに向けられる真剣な眼差しから、目をそらせなくなる
「マリンちゃんのことが大好きです。俺と.....付き合って下さい」
試合の時のような真剣な眼差しに、ドキドキする
純粋に嬉しいって思う
でもそれと同時に苦しくなる
「あの....ね、」
「うん」
私のゆっくりとした口調に合わせて優しく、ゆっくり返事をくれる高尾君
「高尾君にそう言ってもらえて、凄く嬉しいなって思ったの、でもね、私、忘れたいのに忘れられない片想いがあって....こんな中途半端な私に、高尾君と付き合う資格なんてないと思うの....それに今そんな事言われると、優しい高尾君の想いを利用しちゃいそうで....だから」
自分で言ってるうちにどんどん悲しくなって、俯いてしまう
「良いよそんなの!」
「っえ?」
急に両肩を掴まれて、高尾君を見上げる
「そうやって素直に答えてもらえて、すっげぇ嬉しいし、それに、忘れたいなら忘れさせてやるから!だから....せめて今は2番目でも良い....だから、俺と付き合ってみてくんね?」
「高尾君.....」
彼の勢いにビクッと震えてしまった
そんな私の反応を見て、一瞬悲しそうな表情をしてから、いつも通り笑おうとしてくれる彼
「....ごめん、がっつき過ぎたよな。怖がらせるつもり無かったんだ....その、ホントに俺、マリンちゃんの事好きで.....利用されても良い、マリンちゃんと一緒に居られるなら....俺.....」
苦しそうな彼の表情が見てられなくなる
私も片想いの苦しさは、好きすぎて苦しくなる気持ちはわかるから.....
だから、私なんかにそう思って貰えたのが嬉しかった
「....ホントに良いの?高尾君の想いを、利用することになっちゃうんだよ?」
「良いよ。これは一緒に居たいからっていう俺のわがままでもあるし」
「私、高尾君と一緒に居て良いの?」
「良いよ!居て!」
「わっ!」
ガバッと音がしそうな勢いで座ったまま抱きしめられる
「俺、絶対忘れさせるから....絶対、惚れさせるから....俺のそばに居てみて?」
「うん」
「っほんと?俺、本気で頑張る!けど、答えはゆっくりでいいから」
「うん、高尾君ありがとう」
嬉しそうな彼の声に、私も嬉しくなってそっと両手を彼の背中に回す
そしたら抱きしめる力を強くしてくれて、安心する....
伊月先輩への想いが無くなったと言ったら嘘になる。
けど、優しい高尾君の笑顔が胸の苦しみを消していってくれる
高尾君を一番好きになれれば、
私も高尾君も
伊月先輩も、幸せになれるのかな
[ 8/22 ]
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