嫌い、嫌い、大好き12
2013/07/27 22:56

「――何?」
「いや……なんかもう、情けねえな、と」

離れた唇に問われて、あながち嘘でもない言葉を口にする。
臨也は笑い、静雄の濡れた唇を指でぬぐった。

「試される、とも違うけど……俺だけに見せるそういうところ、好きだなぁ」
「……ガキくさくて嫌になんだろ」
「本気でそう思う?」

目を丸くするのは演技というわけでもないようで、臨也は意外そうに静雄を見やった。
理解できない、とこちらの卑屈さを笑われる。

「素直で可愛いと思うけど、これって惚れた弱みかもね。弱みが平和島静雄っていうのは、ある意味心強いのか、怖いのか」

指が唇を割り、そっと舌先をつままれた。
器用な指先にもてあそばれ、それだけで体の熱があがる。

「他人につけ入られる心配がない分、最強の弱みって言えるかも」
「ん……」

たまらず彼の指を咥え込む。第二関節あたりまでを口内に入れ、甘く歯を立てた。
濡れた音が響く。
臨也は目を細め、こちらを凝視している。感覚を楽しんでいるように見えた。
恍惚とした表情で彼は言う。

「わからないなぁ。君を嫌に思う気持ちなんて。そりゃ昔は嫌いだの死ねだの殺すだの、なんでも言ってたけどね。でもあれって無意識に好きの裏返しみたいなところがあったし……シズちゃんが自分を嫌うように嫌いだと思う気持ちって、よくわからない」

本当にわからないのだろう。あどけない子供が首をかしげるように、臨也の目は好奇心に輝いていた。
それに嬉しさを覚えるのだから、自分も確かに厄介な性格である。



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