嫌い、嫌い、大好き11
2013/07/25 13:37

「詫びっていうか、埋め合わせ」
「…………」

臨也は執拗に『埋め合わせ』という言葉を繰り返した。
謝罪や物といった具体的な要求でない分、どうしていいかわからない。求められているものが漠然としすぎている。
押し黙ったままでいると、彼は意味ありげに笑い――。

「またはセックスとも言う」
「…………」

艶めいた視線と指先が静雄に絡まる。
色気というか、雰囲気というか。そういうものを醸し出すのがとことんうまい男だ。
単純な自分はすっかりその色香にあてられ、今にも陥落してしまいそうだった。

(あーあ)

毒気を抜かれ、大きな溜め息が洩れた。
すると自然な動作で唇が寄せられる。

「――――」

ふれた心地よさに、静雄はうっとりと目を閉じた。
こうやってあやされて慰められて、それが情けなくもあるが、どうにも癖になる。

(こいつが攫われたりしねえかな……そしたら助けに行ってやるのに)

情けなくても甲斐性がなくても、恋人の窮地を救えばヒーローだ。
もはやそういう部分で挽回するしかないのでは、と最近考える。

(あー、でも怪我とかされたら……嫌だな……)

キスの合間にそんな取りとめもないことを考え、静雄は小さく笑ってしまった。



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