嫌い、嫌い、大好き9
2013/07/21 06:15
しかしそうは思うものの、現実にそれが叶うことはない。
ただ、臨也の目には自分がどんなふうに映っているのか。
わがままな子供か、あるいは情けない大人か。
それだけが気になった。
「で、何が嫌なんだっけ?」
「……もういい」
拗ねた口振りになってしまったが、もはや気にしても仕方がない。
――最初から嫌じゃなかった。
そんな素直な言葉は音にならないけれど、臨也はとうに知っているだろう。
嫌なのは自分で、臨也との間にあるものに不満などない。
本音どころか嘘でしかない言葉を無性に言いたくなって、こらえきれず言ってしまった理由は、まさに彼の指摘するところの『確認』のため。
無駄に時間を使ってしまった。今はその後悔が大きい。
多少の開き直りもこめて、静雄は臨也に問いかけた。
「じゃあ今、俺がどうしたいと思ってるかわかるか?」
「埋め合わせがしたい、でしょ」
さらりと答えを返される。
prev | next
memo top