嫌い、嫌い、大好き7
2013/07/17 16:52

「そういう嘘を嘘だって見抜いてほしいとか」
「っ」

知ってるんだよ、と囁かれる。
彼の態度は変わらない。穏やかに笑って、そしてその指は優しく静雄の頬を撫でる。
臨也の核心を突く言葉にふれた途端、静雄の中でまるで子供のような自分の声が響いた。

その子供は、決まって静雄がどうしようもない状態になってから現れる。
そして今までどこにいたんだと思うほど雄弁な子供は、静雄の中で主導権を得るのだ。
本音などひとかけもない嘘を吐いたあと、子供が大きな声でわめく。

――嘘だよ、だから嫌わないで。嘘なんて言いたくないけど、でもつい言ってしまう。
だって本当のことを言うには嘘を言う何倍も勇気がいるから。
嘘はすぐに口から零れ落ちる。こんなに簡単に。思ってもないこと、言いたくないこと。全部ぜんぶ、嘘。
でも嘘は嘘だから。
絶対に信じないで、少しも揺らがないで。嘘だってわかって。

自分の内からせり上がる声を強引に無視し、静雄はさらに悪態をついた。

「うるさい、死ね」
「そういう悪態にも動じないでほしいとか」

けれどやはり、臨也はしたたかなまま。眉ひとつ動かさない。
我ながら呆れる思いで臨也の声と、そして憎たらしい胸中の声を聞く。
子供は随分わがままで横暴なようだった。



prev | next
memo top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -