基地に入るとき、お疲れ様です!と耳が痛くなる程の大きな声をかけられて、前を歩くハロルドは平然としていて。置いていかれないよう小走りでついていきながら基地の中を見渡した。
皆、大きな声を出して素振りをしていたり、沢山の書類を持って走り回っていたり。簡易的ではあるけれど、皆鎧を着ていた。ああ、戦いなんだ。本当に戦争がおきているんだ。
基地に入る前に、ハロルドから戦争の最中だと聞いた。空に浮かぶ大きなUFOみたいな、そんな感じの浮遊物にミケランジェロだかミクトランだかがいて、なんか色々なものを支配してるらしい。
そのミ…なんとかを筆頭にUFOみたいなので生活というか乗っているというか、まあそんな感じの人達を"天上人"といい、ハロルド達を"地上人"というらしく。ん?天上軍と地上軍だっけ。
「此処よ」
『えーと、司令室?』
「まあそんな感じね
あ、色々いちゃもんつけられたりキッツイ事言われると思うけど、耐えてちょうだい」
『…はい?』
「戻ったわー」
ばさ、と垂れ幕みたいな入口の布を避けて中に入っていくハロルド。え、待って置いてかないで!けど勝手に入っていいのか分からずにその場に立ち尽くしていると、ひょっこり顔を覗かせたハロルドに、早く入ってきなさいよと急かされて、怖ず怖ずと中に足を踏み入れた。
ピン、と張り詰めた空気。明らかに向けられた殺気。これでも武道の心得はある。殺気とか気配には人よりも敏感だ。向けられている殺気は主に3つ。強すぎる殺気に眩暈がしそうだったけど、耐えろとハロルドに言われてしまった、耐えよう。なんとしても。
「紹介するわ、ケイカよ
私の研究施設の近くに倒れてたのを拾ってきたの。このまま私の助手として入隊させるから、ヨロシク」
ぺらぺらと話すハロルドに、眉間の皺が深くなったのは、強すぎる殺気を向けてきた青色の髪をした男。
「待て、急に連れてきて入隊させるだと?隊員に関しては中将である我に決定権がある」
「あらそう、じゃ、許可してちょうだい」
「認めん」
「頭かったいわねー
そんなんじゃ女に嫌われるわよ」
「今は関係ないだろう!」
ぎゃあぎゃあと始まった口喧嘩に、やれやれとハロルドの隣にいた深い赤色の髪をした男性に肩を 叩かれた。優しい瞳、けれど認められてはいないのだ、心を許すわけにはいかない。殺されたら大変だし。
「大丈夫、君を殺しはしないさ
…ハロルドの我儘に付き合わせて悪かったね」
『え、と…?』
「ハロルドの兄だ」
『あ、お兄さんだったんですね。…うん、目許が似てる、かも』
まだ言い合いをしているハロルドと青髪の、ディムロス(とお兄さんに聞いた)を放って、ハロルドのお兄さん、カーレルさんと地上軍の司令であるリトラーさんと、話していた。"(ハロルドと一緒で)大変だったろう"とか"(ハロルドに)血を採られたりしてないか?"とか。その話をしているときの2人は、顔色が若干悪かった。(過去に一体なにが…)
「ああああもう面倒ね
ちょっとリトラー、許可してちょうだい!」
「こらハロルド、司令になんて口を…」
「いいさカーレル中将。ハロルドは言い出したら聞かないし、彼女も悪い子ではなさそうだ
ディムロス中将」
「…は、」
「入隊を許可してあげようじゃないか」
「ですが司令!」
「…この子、帰る場所がないのよ。
ベルクラントで全て吹っ飛んだらしいわ。記憶も、断片的にしかないし
……放っておけないのよ」
「ハロルド…」
ん?ベルクラントってなんだ?全て吹っ飛んだ?え?なんのこと?ちらりとハロルドを見ると、ぱちんとウインクしてきて、ああ、すっごい嘘ついてるよこの人!なんてツッコミたくなった。
俯いたハロルドの名前を呼んだのは兄であるカーレルさん。そして次に聞こえたのは深い溜息。
「……仕方ないな
ケイカと言ったな。」
『は、い』
「入隊を許可しよう」
「やった!さっすがディムロス!」
「ハロルド!」
呆れたように、諦めたように笑ったディムロスさんに許可されて、ホッと一息、つきたかった。けれど、ディムロスさんの言葉に微弱だった一つの殺気が、ぐんと膨れ上がった。
「良いのですか、中将」
「…司令も許可しているし、帰る場所がないのでは無下に基地の外に放り出すわけにもいくまい」
「、それが罠だったらどうするんですか」
「…そうなれば、我が殺すさ」
綺麗な銀髪の男が、鋭い目付きで私を睨みつける。彼は私が入隊することを許可しないのだろう。隣にいた金髪の男性も初めは殺気だっていたものの、私がカーレルさんとリトラーさんと話しているうちに殺気はなくなっていた。
「シャルティエ、」
「イクティノス…」
『…どうしたら、認めてくれるんですか?』
「ちょ、ケイカ?」
『そんなに認めたくないなら、認めさせてやるわよ』
「、臨むところだ」
宣戦布告
20110925
こんな簡単に認めていいのか地上軍!っていうツッコミはなしでお願いします←
D2のときにハロルドが言いくるめたみたいにしてみた←
因みに、恵華はDの存在も知りませんし、テイルズなんてゲームも存在していない時代です。今から25年ちょっと前の設定なので。
ていうかカーレルまじで好き私!←
ひぐらのえ
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