ケイカとシャルティエの険悪なムードに第二師団の戦闘部隊、精鋭小隊の人間は戸惑っていた。
先程よりも隊長であるシャルティエの剣捌きがすごくなったことと、その姿を見ながら不安そうにしているケイカに、もどかしい気持ちが浮上したのは言うまでもない。
ケイカが入隊して3ヶ月以上経ち、最初は特別入隊で更に役職にまで就いたケイカを妬む兵士も多かった。が、ディムロスやリトラー、カーレルや、他の兵から信頼されているソーディアンメンバーと仲の良いケイカを見てケイカの笑顔に癒される者も少なくはなかった。そしていつも、にっこりと笑顔で頑張ってくださいと声援をもらい、怪我をしたら自分のことのように心配してくれるケイカに、愛おしいという感情が芽生える兵も少なくなかった。
「ケイカ中尉、大丈夫ですか?」
「大丈夫、ありがとう心配してくれて」
「い、いえ!」
シャルティエが心配でついて来たのに、兵士に心配されてしまった。シャルティエも怒らせてしまったし、私は役立たずだ。ケイカの負のオーラは周りをも巻き込む勢いで、兵士は慌てるばかり。
ケイカと、シャルティエ。早く、早く仲直りしてくれ!と内心願わずにはいられなかった。
「あの、シャル」
「…なんですか」
「あの…頬、怪我、」
いましがた終わった戦闘で、シャルティエは頬に切り傷を作った。ケイカはゆっくりと近付き、辛うじて返事をしてくれたことに安堵する。
す、と手を頬に伸ばすとシャルティエはぴくりと肩を揺らしたが、その手を払うことはせず、ケイカの手を受け入れた。
「いま、治癒するからね」
「僕より、他の兵士を」
「シャルが頑張ってたから、みんな怪我してないわ、だから」
治療させて、ケイカの小さな声にシャルティエはケイカを見る。ぱちり、目が合うとケイカは嬉しそうに笑って、ヒールを唱えた。
「無理、しちゃ駄目だよ」
「…ありがとう」
「っ、うん!」
自然に、自然に、とシャルティエはケイカの頭を撫でる。ケイカはくしゃりと破顔させてシャルティエの服の裾を掴む。その行為にシャルティエはどくん、と心臓を大きく鳴らし「ケイカ?」と呼んだ。
「ごめんなさい、シャル。私、」
「なんでケイカが謝るんですか、僕が」
「でも、でも…シャルを怒らせたのは私だから」
「ちが…!」
違う、違うんだ。ただの、嫉妬だった。関係ないと言われたことが、ショックだったんだ。僕は、ケイカが好きだから、誰にも、渡したくないから。
その言葉を飲み込んで、僕も、すみませんと謝罪するとケイカは、じゃあこれでおあいこね、と微笑んだ。
「シャル、私も、みんなも頑張るから、みんなで戦お、ね?」
「…はい
皆さん、隊長である僕が突っ走って、すみませんでした。隊長失格ですね」
シャルティエは兵士に向き直り頭を下げると、兵士は慌ててシャルティエに顔を上げてください!と一斉に言った。仲直りしてくれて良かった、とホッと息をついた兵士達は、嬉しそうに笑うケイカとシャルティエを見て、自分のことのように、笑った。
精鋭小隊、悩み解決
(ちょ、ケイカ危ないです!)
20120924
D連載もかなり久々でした。もうどうしたらいいかわからなくなるくらいの難産で、やっと完成できました。
日が開かない内に、また更新できたらいいなと思います。
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