好きだとか、愛してるだとか。そんな言葉じゃ表せないくらい。好きよりももっと、愛してるよりももっと、もっと大きな気持ち。
どうしたら伝わるかなんて、考えるよりも先に抱きしめて抱き着いてキスをして、言葉だけじゃ足りないけれど、けれど愛してるの言葉も頂戴。
「ふぁー…」
「眠いのですか?」
「んふふ、ちょっとだけー」
ストラタ軍の執務室に私はいた。恋人であり少佐という地位にいるヒューバートが、盛大に欠伸をした私を見遣り、走らせていたペンを止めた。
ソファに座っていた私の隣に腰掛けて優しく、それは優しく頭を撫でられる。きゅうん、と胸が苦しくなるのと同じくらい温かくて幸せな気持ちが広がった。
「ちょ、リティル、抱き着かないでください」
「やーだ、だってヒューったら構ってくれないんだもん」
彼が忙しいのは重々承知だ。今だってこんな時間まで仕事をしてるのは少佐である彼は優秀で仕事が沢山はいってくる。けれど毎日こんなにも遅くまでペンを握っているのかと思ったら、邪魔でもして休憩させないと、なんて思ってしまうのだ。
私が欠伸をしたのは、まあたまたまで、だってもう日付変わったし、1時だし。ペンを置いて隣に来てくれたヒューバートは、なんだか珍しいという印象だった。普段は、眠いなら帰ればいいですよ。なんて酷いことを顔赤くしながら言うのだから。
それも、ツンデレな恋人のことだから気にしながらも帰ってほしくない、って言われてるようでいつも帰らないけれど。
そして今。抱き着いてる私に、ヒューバートは顔を赤くしているあたりそこまで拒まれてはいないし、ぐりぐりと胸に頬を押し付ければヒューバートの手が私の背中を触る。
「今日、もうおしまい?」
「いえ…、まだ1時間はかかります」
机に置かれている書類の山を見て、溜息をついた。"すみません"と謝るヒューバートを責めることはできないし、責めるべきはヒューバートじゃなくて彼に仕事を割り当てた上司達だ。
今日は、今日は恋人達の大事な日であるというのにだ。家族がいるから、恋人が待ってるからとヒューバートに頼んでくる輩を、氷漬けにしてやろうかとも思った。けどそれはヒューバートに止められて。
「すみません、仕事を休ませたのに」
「…いいよ、仕事なら仕方ないし」
ああ、どうして私はこうも可愛くない言い方しかできないのだろうか。
一緒にいられるからいいよ、とか言える可愛い子ならよかったのに。
「急いで終わらせます
もう少し、我慢してくださいね」
「ヒュ、」
身体をゆっくりと離されて、目の前にはヒューバートの顔がアップで。ちゅ、とリップノイズが聞こえて顔が離れていく。
茹で蛸のように顔を真っ赤に染めたヒューバートは口元を軍服の袖で隠し、手を握られて、じっと見つめ合った。
「ヒューバート?」
「…無くしたら、許しません」
「え?」
離された手。自分の手の平には、きらきら光るまぁるい輪。それが指輪だと気付くのに時間はかからなくて、くるりと振り返ってヒューバートを見た。
「ヒューバート、これ!」
「貴女のような人と付き合えるのは、僕くらいですから」
左手薬指は僕のもの
(今はまだ、予約です)
(うぅー…っ)
(な、泣くほど嫌、ですか)
(違うよ、馬鹿ぁ!)
20111222
X’mas企画夢一つ目。
というか、これだけで終わるかもしれないけれど←
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