薄紅にまばたき

 無事にどの組み合わせも戦闘訓練が終了、私たちのチームもお互いの個性が活かせた良い訓練だったと思う。教室へ戻り反省会をクラスのみんなで行っていると、みんなの注目株、緑谷くんが保健室から戻ってきた。体調の心配や、先程の感想など、みんなわらわらと入り口付近へ集まっていく。

「緑谷くん、本当にすごかったもんね」
「白羽さんも凄かったよ。まさか同時に沢山弓矢を作り出せるなんて」
「ああ、遠距離支援に最適だな。さっきの意表を突いた狙いも良かった」
「へへ、ありがとう尾白くん、常闇くん。ふたりの個性も凄かったね! きっと近接戦で大活躍だろうなあ、私は苦手だから羨ましいよ」

 得意の遠距離の攻撃を褒められると、嬉しいけれど少し照れくさい。こうやってお互いに褒めたり周りから見た自分の姿など、客観的な意見がもらえる事もヒーロー科らしくてなんだかそわそわしてしまう。これが日常的になっていくんだろうな、そう思うとまたドキドキと胸が高鳴ってしまいそうだ。

「白羽、今日暇だったら飯でも行かね?」
「ごはん……! ぜひ行きたい! ね、響香」
「え、ウチも?」
「うんうん、みんなで食べた方がきっと楽しいよ、ね?」

 先程同じチームだったメンバーでご飯、こういうのもすごく青春っぽくてついニヤけがとまらない。美味しいご飯に、楽しいクラスメイトとの会話、きっとこれ以上ないほどの素敵な時間だ。

「お、おう……!」
「……アンタ、弓弦狙いならウチを通してからにしてよね」

 響香が上鳴くんにぼそりと何か呟くと、まるで図星だと言わんばかりにギクリと固まった。なんだか頬が薄く色づいているような、少し汗をかいているような不思議な顔だ。さっきの訓練の疲れがまだ残っているのかもしれない。他の人も、勿論私も、はじめての経験できっと疲労は溜まっているはずだよね。

「あ、そうだ。今のうちに連絡アプリでクラスのグループ作っとこうよ」
「確かにそうだな、早めが良いだろうし」
「でも爆豪は緑谷が入れるとして、轟は? アイツの連絡先誰も知らないんじゃない?」
「あ、私知ってるよ」
「えっ?」

 まだ誰もちゃんと轟くんと話したことがないらしく、二人には凄く驚いた顔をされた。上鳴くんは「まさか轟は白羽狙い……!?」とか言っていたけど、もしかして一緒にご飯食べる約束してるのを知っていて、私のお蕎麦が狙われていると……? 轟くんもたくさん食べる人なのかもしれない、それならその分たくさん頼めば良いから大丈夫だよね。あ、シェアするのも良いかも、今日の訓練のお話もしたいな。なんだか急に楽しみになって、轟くんへ“ご飯、いつにする?”とメッセージを送ると、“明日でも良い”との返事がすぐに返ってきた。学食のお蕎麦、楽しみすぎる……!

「今日はどこに行こっか?」
「何が食べたい? 肉とか、魚とか、系統決めてくれたら調べるぜ」
「ええ、すごく迷うな……、響香は何がいい?」
「とりあえず今日はファミレスでいいじゃん、好きなもの選べるし」
「そうだね、そうしよう!」
「じゃあ次はお洒落なカフェとかも行こうぜ、いいとここの前見つけたんだよな」

 帰り支度をしっかりして、三人揃って賑やかな校舎を背に夕陽に目を細めながら歩く。今日の反省とか、今後のやりたいこと、行きたいところ、そして趣味や好きなもの。いくら話しても時間は足りそうにないから、今度は他の人たちも混じえてみんなでも遊びに行きたいな。疲れているはずなのに足取りは軽やかで、きっとそれは二人も同じなのだと楽しげな表情を見てそう思った。
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