好きがきらきら光るんです



 中学生。思春期、恋愛、青春。そんなものは俺には関係の無いもの。ましてや自分が自ら関わりに行くような、輪の中に入るようなことはありえないと思っていた。

「獄寺くん、今日は楽しみだね!」
「そうですね10代目!」
「夏といえばやっぱ海だよな!」
「暑いけど、だからこそ海とかプールとか、楽しめるものがあるよね」
「はひっ!ハルは名前ちゃんと京子ちゃんと一緒に水着が選べて楽しかったですー!」
「私も楽しかった!今日も沢山楽しもうね」

 今日みたいに、夏休みだからとファミリーやその他もろもろで集まり、海に行ったりするなんて昔の俺には考えられなかっただろう。

「はやとー、どう、にあう?」
「…馬子にも衣装なんじゃねーの」
「おー、隼人が貶さなかった。水着の威力とはすごいな」

 ほう、と謎に納得したかのようにする名前。こいつの存在こそ俺の人生の中で1番ありえない存在だ。この俺が鬱陶しく思わず、ましてや好意を持つ女が現れるなんて昔は想像すらできなかった。居たとしても精々興味を持つとかそのくらいだと思っていたのだ。

「…おら」
「わっ。なにこれ、パーカー?」
「暑いからやる。お前着とけ」
「えー、私も暑いんだけど」
「いいから着とけ!」

 馬子にも衣装、とか言いつつもすごく似合っている。笹川と三浦に選んでもらったらしいが正直ナイスだ二人とも。しかしそんなことは言えないためとりあえずパーカーを投げつけた。

「えーでも…」
「だーっ!いいから着てくれ!じゃねーと目のやり場にこまるんだよ!」

 きょとん、とした顔をする名前に、やっちまった、と心の中で嘆く。これじゃあ意識してるって言ってるようなもんじゃねーか!

「…えーっと、」
「…いい、何も言うな」
「隼人…あの、でも、ちょっと嬉しいかなー…なんちゃって…」

 お、泳いでくるね私!そう言い残して名前はパーカーを脱いで俺に投げつけると海辺にいる10代目達のところに走っていった。驚くことに、パーカーの隙間から見えたあいつの顔と耳は赤かったのだ。
 つられて赤くなった俺は、先程の名前の発言をどう捉えていいのか、あの反応はどういうことなのか、ぐるぐると考えてしばらくその場にしゃがみこんだ。

「若いね〜」
「うるっせー」

 そしてふらついていた俺はシャマルが待機していた休憩用のテントに引っ張られた。だせえ。それもこれもあいつのせいだ!そう思ってアイツを遠目で眺めると、なぜだか名前だけがあの場できらきらして見えて。こいつは重症だ、と頭を抱えてしまっても、もう手遅れなのだ。

20190119


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