かみさまになれない人
昔からへなちょこで、私の前ではいつも不器用で。可愛いと思うことはあってもカッコイイなんて思うことはほとんど無かった。けど、そんな貴方も愛おしくて、その姿をずっと隣で見たいと、物心着いた時には既にそう思ってた。
「名前〜一緒に日本行こーぜ!」
「日本?どうして?」
「俺の弟分ができたらしいんだ!」
だからこうして大人になって、貴方が大きなファミリーのボスになっても私と一緒にいてくれるのはとても嬉しいことで。私はディーノのことを恋愛感情で好きだけど、貴方はそうじゃなくても隣にいさせてくれることが私にとって何よりの幸せ。
「どんな子なの?弟分って」
「聞いた話によるとだいぶポンコツらしい。昔の俺と似てるよな」
「ふふ、確かに」
「おい名前…笑うなよ…」
楽しみだな〜と期待に胸をふくらませているディーノの後ろに控えているのはファミリーの部下の人たち。彼らがいるお陰でディーノは一人前のボスとしていられるのだ。
「弟分ができて、ファミリーとも上手く関係を築けて。これも全部、お前が隣にずっといてくれるおかげだよ。」
「…急にどうしたの?」
「いや、なんとなく言いたかっただけだ」
「そっか」
日本に着くまで休もうぜ、と言って自然な流れで私の手を取り口付ける。イタリア男はやはりキザだなあ。
「それにリボーンにも報告しなきゃだしな。俺たちのこと」
「リボーンに…報告?何を?」
少し照れくさそうにそう呟いたディーノに思わず聞き返す。最近いい事でもあっただろうか。確かに、ここ数日のディーノはやけに上機嫌で、前にも増して笑顔が増えたような気がしていた。どこかとの取引でも上手く行ったのかと思ってたけど、その事かな。
「いや何って、俺らが婚約したことに決まってるだろ?」
「…は?婚約?誰の?」
「俺の」
「…誰と?」
「…いやお前しかいないだろ」
「……は?」
そういえば。なんか最近スキンシップ増えたし、一緒にいる時間増えたし、急に日本に行くというのも一緒に行こうと言ってくるし。
「ちょっと待って、いつ私らそんな関係になった?というか付き合ってなかったよね?」
「…一週間前お前に告白したときに名前が付き合うよりも婚約がいい!って言うからすっ飛ばして婚約にしただろ?」
「…えっ?」
「まさか、名前もしかして、覚えてないのか…?」
頭が痛くなってきた。必死に一週間前の記憶を辿る。一週間前といえば、たしかあるパーティにディーノが参加してて、その時周りの綺麗な女の人達から言い寄られているディーノを見て、…嫉妬して。何の関係もない私が嫉妬するのはおかしいじゃないか、そう思いながらも本心には嘘をつけなくて。パーティが終わって家に帰ってから浴びるように酒を飲んだ。そして、
「…潰れる直前にディーノが、うちに来て、」
「ああ、そんときにお前に嫉妬した云々の話を聞かされたんだよ」
「うわ、今思い出した。しにたい」
「おいおい…」
酔ってたとはいえあんな醜態をさらしたなんて、最悪すぎる。どうしよう、泣きそうだ。
「俺は、普段は全然俺の事なんか意識してませんって感じのお前がああ言ってくれたの嬉しかったんだぜ?」
「恥ずかしいからやめて…」
「実はそうやって照れ屋なとこも、嫉妬してくれたところも。全部含めて俺はお前が好きだ、って告白しただろ?」
「…うん、思い出した」
「なら、よし。まあお前が婚約がいいって言ったから、俺もお前の全てを受け止めるつもりで婚約しようって伝えたしな。」
恥ずかしさと申し訳なさで涙が滲んでくる。こら、泣くなよ、と言ってディーノが指で目元をすくう。その手が優しくて、また涙が零れた。
「ほんとに、こんな私でいいの?」
「そんなお前だからいいんだよ」
「…ありがとう」
「こちらこそ。あ、ほら名前手出せよ」
「…これ」
そっと差し出した私の手を取り、指を愛おしそうに撫でながらディーノがそれを付けたのは薬指。きらきらと光る、シンプルだけど綺麗な指輪。ああかみさま、こんなに幸せでいいのでしょうか。
「もう一度言うぞ?愛してる。俺が名前を幸せにするから、結婚を前提に婚約してくれ」
「ふふ、面白いセリフね、結婚前提の婚約って」
「し、仕方ないだろ!」
「うん、嬉しい。私、今までで1番嬉しいよディーノ。私も、愛してる」
なんでも出来る神様のように完璧な人じゃない、けれど私にとっては太陽のような存在で、一際愛おしい。私が好きな少し照れたような笑顔を見せるディーノを見て、改めて思った。
20190204
ディーノさん誕生日記念