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外は快晴、絶好の行楽日和。今日のために新しく買った水着は何度見直してもやっぱりとびきり可愛い。空と海に映える花柄は気分をとても上げてくれる。

「じゃーん、どう?似合う?」
「…馬子にも衣装?」
「よろしいならば戦争だ」
「ぶはッ、おま、いきなり水かけんじゃねーよ!」

失礼な言い方をする目の前のやつに向かって遠慮な水を浴びせる。ツナや山本は可愛いねって褒めてくれたし、一緒に選んでくれた花や京子からはこれが絶対良いよ!と太鼓判を押されたのに、一番良く思われたい相手からはそんな評価でやっぱりか、と少しだけ落ち込む。いつも喧嘩ばかりの私達だし、照れ屋な彼はなかなか褒めたりしてくれない。たまには言ってくれてもいいのに、と思いつつ馬子にも衣装だなんて言われた報復はしてやる、とまた水を思いっきり掬って吹っかける。

「ちょ、耳に入ったんですけど!」
「こっちだって入ってんだよ!」

うるせー!と言い返しながら水の掛け合いがヒートアップし、お互いがびしょ濡れになって肩で息をつく頃にやっと落ち着いてくる。来たばかりなのにもう全身ずぶ濡れだ。

「もーせっかく可愛い水着着てきたのに…写真撮る前にびしょ濡れじゃん」
「お前が最初に水かけてきたんだろーが」
「アンタが失礼なこと言ったからでしょ」

初っ端から疲れ果て、砂浜に2人並んで座り込み、横を軽く睨みながら口を尖らす。少しは悪いと思ってくれないかなと思って顔を覗き込むと、目線を逸らされる。意を決したようにこちらを見て、随分とまた間を置いてからぽつりと呟いた。

「……似合ってる」
「え?なんて?」
「だから似合ってるつってんだよ、何度も言わせるんじゃねー!」

聞こえてんだろ!と頬どころか顔全部を赤く染めてまたそっぽを向く。珍しく褒めてくれた言葉に驚き、開いた口が塞がらない。そして真っ赤に染まった耳を見つめた瞳はいつもの1.5倍くらい見開いているんじゃないだろうか。

「…ねえ、獄寺、もっと言ってよ」
「はあ!?おま、俺の話聞いてんのかよ、もう言わねーよ!」
「やだ、聞きたい」
「そ、そんな顔で見てもダメだ!」

大きな声でそう叫ぶと、煙を上げそうなくらい真っ赤になった顔を隠すかのように走って海へと飛び込んでいった。…周りからの視線をすごく集めたことに気付かないのかな、残されたこっちはだいぶ恥ずかしいんですけど。思わずため息を吐く。でも、あの照れた顔を見る限り、少しは自信を持っても良いのかも。獄寺のためにこの水着選んだんだよ、だなんて言ったらどんな反応をしてくれるだろうか。そんなことを考え、口角を上げながら走り去ったあいつの背中を追い掛けた。

ワンライお題「もっと」20200730
#復活夢版深夜の真剣創作60分一本勝負


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