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先週から隣の席になった獄寺くんは基本的に寡黙だ。沢田くんや山本くんと居る時にはすごく生き生きとして話していて、年相応の男の子って感じだけど、それ以外ではとても静か。誰かから彼に話しかける、といった場面もあまり多くは見ない。目付きが悪いからと遠巻きに見る人も多いけど、普通に考えたらコンプレックスかもしれないし私はあまり気にしていなかった。特に話すこともなかったけれど。

一番眠かった昼食後の5時間目、チャイムを聴いてやっと終わったと一息ついて次の授業の準備を始める。今日は天気も良くて過ごしやすく、さっきの時間は寝てる人も多かったみたいだ。

「…あ、やべ」

教科書を出していると、思わずといったように小さく呟いたその声が耳に入り、隣をちらりと横目で見る。どうやら教科書を忘れちゃったみたいだ。…見せてあげるべきかな。普段話さないから、気にはなるけれど少し迷う。困ってるみたいだし、急に話しかけたら驚かれちゃうかな。でも次の授業は数学、教科書がないと授業についていけないし、問題を解く時間があれば尚更困ってしまうだろう。拒まれたら悲しいけど…まあ、その時は仕方ないよね。

「あの、よかったら一緒に見る?」
「…いいのか?」
「うん、どうぞ」
「…さんきゅ」

少し覚悟をして話しかけると、思ったよりも素直に聞き、更にお礼を言ってくれて驚く。なんだ、話してみたら意外と普通じゃないか。
誰かと一緒に教科書を見ることに慣れていないのかな、とぎこちなく机をくっつけて来た獄寺くんを見ながら思う。ぴったりと合わさった机の真ん中に教科書を置いて広げ、見やすいように筆箱で固定したら準備完了。
開始のチャイムがなり黒板を見るために斜め前に視線を上げると、思っていたよりも獄寺くんとの距離が近くて少し驚いた。授業中、ノートを書くとたまに触れる腕や、彼の少し赤くなった耳に気がついた。やっぱり獄寺くんは普通の同世代の男の子なのだ。そこにきゅんと感じてしまったのは、きっとギャップ萌えとかいうやつだろう。

ワンライお題「触れる」20200721
#復活夢版深夜の真剣創作60分一本勝負


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