「あちー…溶けちまいそうだ…」
「日差し強すぎでしょ…」

今日の最高気温は32度。見事に夏真っ盛りというような気温だ。アスファルトは陽炎がゆらめき、セミの鳴き声がいつもよりも耳にうるさく響く気がする。差し入れの菓子を入れた袋をがさがさと音を立てながら名前と共に10代目の家まで歩いているが、暑さで少し立ちくらみしそうなレベルだ。

「あーーー暑い無理しんどい」
「それ以上言うんじゃねえ、もっと暑く感じるだろ」
「だってこんな暑さ久々じゃん…あ、そうだ!」

だるいだの暑いだのわめいてた名前は急に声を上げると持っていたトートバッグを開いた。取り出したのは某カラフルな制汗スプレー。名前が持つ青のボトルのちゃぷちゃぷと揺れる中身は、3分の2くらい入っていて普段から使っているのだと分かった。

「きもち〜ひんやりだ」
「思ったよりも冷えるんだなこれ」
「でしょ!香りもお気に入りなんだ」

ふわりと香るシトラスの香り。甘すぎずさっぱりとした柑橘系の匂いは名前らしくて似合ってる。

「まあ、悪くねえ」
「へへ、お気に召したようで何より」

次もこの香りにしようかな〜と気分よく鼻歌まで歌いながらボトルをバッグに戻し、あと少しがんばろー!と声をかけられる。10代目の家まであと5分ほどだ。
スッキリとした気分で歩き終え、玄関のインターホンを鳴らせばすぐに10代目が出迎えてくれた。

「お待たせしました10代目!」
「は〜暑かったよツナ〜」
「2人ともお疲れ様、お菓子までありがとう!」

冷房効いてるから俺の部屋で待ってて!と言うお言葉に甘え、菓子を手渡してから階段を登る。
一応レディーファーストだしドアを開けてやると名前がありがと!と言って部屋に先に入る。些細なことでも感謝を言うところ、正直すげーと思うし尊敬してるけどぜってー本人には言わねえ。

「あれ、なんか2人から同じ匂いがする…柑橘系かな」
「さっきこれ使ったからかな。いい匂いでしょ」
「うん、さっぱりしてていいと思うよ」

10代目に香りのことを問われ、名前はこれお気に入りなんだ〜と普通に話しているけれど、よく考えたら、同じ匂い。今俺と名前が同じ匂いを纏ってる…。そう考えたら、なんだか顔が熱くなって。
…マーキングされてるみたいだ、だなんて考えが頭に出てきて忘れろ俺煩悩よ立ち去れと思わず顔を勢いよく振ってしまい2人に心配された。アホかよ俺…。とりあえず火照った顔を冷やすために洗面所を借りて顔を洗ってこよ。

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