夏の暑さにも慣れてきた。…なんてそんなわけなくて、今日も気だるい一日が始まる。今日は昼からバイト。こんな暑い日にバイトだなんて、過去のシフトを組んだ私を恨む。

「あれ、獄寺じゃん」
「ああ、お前か」

バイト先に向かう途中、コンビニの近くで獄寺と会った。相変わらず白い肌だ、羨ましい。なんてぼーっと思ってると熱中症を疑われた。ひどいやつめ。

「お前顔火照ってるぞ、ほんとに大丈夫か?」
「大丈夫だって。私の健康さはよく知ってるでしょ?」
「へいへい、ほら行くぞ」
「ちょっ、私バイトなんだけど!」
「今日は13時からだろ?まだ余裕ある」

なんでバイトの時間知ってんの、とか、手引っ張られてるとか。何も聞けずにぐいぐいとコンビニの中へと引っ張られていく。あ、ここって夜に獄寺と会ったコンビニじゃん。
強制的に中に連れていかれると、獄寺が迷いなく向かったのはドリンクコーナー。飲み物でも買いたかったのだろうか、なら私はいなくてもいいんじゃないかな。それより私は新発売のスイーツの方が気になって、手は離されていたからゼリーとか美味しそうと見ていたらいきなり頬に冷たい感触が。頬に当てられたのはひんやりと冷えたカルピスサイダー。

「奢り」
「え?」
「熱中症で無様に倒れんなよ名前」
「ちょ、獄寺?」

ぶっきらぼうにそう言って、じゃあなとでも言いたげにアイツは手を振ってコンビニから出ていった。チョイスがスポーツドリンクとか水とかじゃなくてカルピスサイダーってところが可愛くて思わずきゅんとしてしまう。
カルピス、初恋の味、か。この気持ちが恋だというのはもう自覚してる。でも、獄寺は、…いやツナも山本も。アイツらは何かを隠してる。だから、私が踏み込んでしまっていいのか少し戸惑ってしまうのだ。
獄寺への想いは引き返せないところまできてしまってる。後は想いを伝えるか、伝えないかだ。

「…ツナや山本に聞いても多分はぐらかされるんだよな」

仲間はずれ感があって悲しい時もある。いつの間にか怪我してたりするから心配だってする。でも、アイツらが言わないってことはつまり、私のことを守ってくれてたりするんだろう。バイトの時間が迫ってきた。行きたくないけど暑さで茹だる外へと出よう。…高校卒業するまでには、告えたらいい。そう思いながら冷えたカルピスサイダーの蓋を開けた。

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