夏になると暑さもだが、太陽による紫外線も強くなる。肌が白い方である俺は日焼けはあまりしないが、代わりに外に長居すると肌が赤くなってしまう時がある。だからといって日焼け止めを塗るのも面倒。女子みてーに毎日毎日塗りたくるのは面倒くさすぎる。

「だから10代目とどこかへ行く以外は引きこもるのが一番だよな」
「麦茶飲みながら真顔で言うな」
「いてっ、なんでチョップしやがったてめえ」
「人の家に勝手に来てソファ占領してるからだよ」
「俺んち日当たり良すぎてあちーんだよ」
「うちは日当たりが悪いってかこのやろ」

なんとなく暇だったから名前の家に来た。どーせこいつの両親は仕事でいないだろうし。暑い中態々くるのは昼飯をたかりに来るっていう目的もあった。こいつの飯はうめえから。文句を言いつつも昼食を作ってくれるらしい。なんやかんや言って名前は面倒見がいいのだ。あのアホ牛や10代目のお宅に住んでるチビ共の相手も率先してやっていたし、多分世話係を決めるんだったらこいつになるんじゃねーかってくらい。中学の頃は10代目っていう結論になったけど今ならこいつだろ。飯うまいし

「焼きそば作るけど塩とソースどっち派?」
「あー、塩がいい」
「はいはい」
「礼に持ってきたアイス食っていいぞ」
「まじ?ハーゲン?」
「んなわけねーだろゴリゴリで我慢しろ」
「ちぇっ」

野菜を炒める音を聞きながら、ぼんやりと興味のない政治や知らねえアイドルの新曲、不倫騒動などのニュースが流れるテレビを眺める。右上に映る天気予報は今日が1日中気温が高くて快晴だということを知らせていた。

「できたよーはこんでー」
「へいへい」
「麦茶出した?」
「出した」
「箸は?」
「まだ。つーかいつも使ってるやつここに無い。そっちにねえか?」
「あーあった。持ってくわ」

名前がキッチンから俺と名前の箸、そしてポテトサラダの入った小鉢を2つ持ってきて、机に置いてから俺の向かい側に座る。
なんか、ちょっと前から今までの流れって

「なんか、家族みたいだね。こういうの」
「…そーかよ」
「うん、やっぱり誰かと一緒に食べるのっていいね。態々来てくれてありがと獄寺」
「…お前の飯はうまいからな。飯に罪はねえ」
「やったぜ。じゃあ今度来る時はハーゲンね」
「ぜってーやだ」
「ひどい!」

…新婚みたいだ、と思ったなんて。俺の頭はどうやら暑さでおかしくなっているらしい。普通名前が言ったように家族みたいだ、とかだろ。アホか俺は。
飯を味わいつつもかき込んで食べ終わる。相変わらず料理の腕は高校生の割にいいほうだと思う。その上手くなった理由が家にひとりが多いから、というのには触れないようにしているけど。

「あれ、よく見たら顔赤いじゃん。日に焼けた?」
「はっ!?別に赤くなってなんてねーよ!」
「えー、でも赤いよ?鼻のとことか」
「…マジ?」
「マジ」

鏡を借りて見てみると鼻のとこと頬の一部が赤くなっていた。いつの間に焼けてしまったのだろうか。触ると少しヒリヒリとした。

「日焼け止め塗らないからそうなるんだよ」
「めんどくせーからな」
「とりあえずほら、これで冷やしてから化粧水塗っておいたら?」
「ぶはっ、!おい顔に投げつけんな!」
「取れなかった獄寺がわるい!」

顔から落ちたタオルはひんやりしていて、広げてから顔に被せると気持ちがよかった。…こういう気遣いができるから実はモテるってことに、コイツは気づいてない。

「大丈夫そう?」
「まあまあだな」
「はいはい。もう1枚あるけど、そろそろタオル変える?」
「…変える」

こいつの傍は居心地がいいから、そのことに気づいたやつはこいつに惹かれるんだと思う。10代目や山本も例外じゃない。恋愛感情かどうかは知らねえが、好意的なのは確かだ。負ける気は無いが、ライバルが増えすぎても困る。
…俺の想いは、いつ伝えるべきだろうか。

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