寸止め
芳樹が汗を掻くと、とてもいい香りがする。甘いような酸っぱいような、太陽の光をたくさん浴びた葉っぱのようなお布団のような、可愛らしいお花のような、綺麗なお花のような、なんとも言い難い香りがする。女のわたしでさえとてもいい香りだ。この世のどこにも、この香りを持つ男性はいないだろうし、女性だっていないんじゃないかって。
「あっ……よし、き」心臓が掴まれた、香りが漂った。
芳樹の胸に頭を預けて、胸が苦しいので短く息を吸ったり吐いたり、たまに長く息を吐いて、長く吸う。夏は暑い、更に暑くさせているのは窓も開いていないこの部屋でわたし達の行為のせいでもある。脚を腰に回して背中に腕を回した。
「はっ はぁ 芳樹、さん」
芳樹は自分のものをいれずに、指だけでわたしの中を掻きまわしている。ぐちゅぐちゅと卑猥な音と、芳樹の吐息に耳が支配され、目を瞑っているから、よく聞こえるし、気持ちよさもいつもの倍以上で感じられる。
「あっ あっあっ!ふ……あぁ」
芳樹が初めての男性だった。つい最近まで生娘だったわたしは、ナカが狭いのだそうだ。毎日しているわけでもない。毎日自慰をしているわけでもない。わたしはそこまで性欲があるわけではないから、芳樹の誘いもたまに断ったりする。芳樹も疲れるからって何度もするわけでもない。
「いれていい?」
「ッ…!い、いれるの遅いですって!」
「だって名前のなか狭いから……ちゃんと慣らしておかないと俺がつらいんだよ。わかんないでしょ?引き千切られる思いしたんだから」
そう言われても、芳樹のようなものが付いていないからよくわからない。
「わたしだって、濡れてないと痛いんだからね、芳樹にはわかんないだろうけど」
「ふぅん」
先っぽが筋を撫でる。挑戦的で余裕のある芳樹の顔が気に食わなくて、綺麗な顔を睨めば、更に撫でる速度を早くした。
「絶対…ま、負けないんだからね」
「いいよ?俺は別に それでも構わないけど……」
名前は我慢できる?
「………いつもより濡れてるけど、名前ってもしかして焦らされるのが好きだったりするの?まったく、言ってくれればこういうことやってあげたのに」
「……よ、よしきは、いつも、わたしを待たせるでしょ、だから、多分、えっと、………だ、だから…」
「………かわいいなぁもう……」
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