第四話:堕落の喝采







 「…………っ」
 梨由は必死で、口をつぐんだ。
 素直な言葉を、心に描くことはすぐにできた、いつだって押し殺し、心だけに留めつづけてきたからだ。
 しかしそれを、いざ言葉にするとなると、おそろしいほどの勇気が必要だった。
 梨由は咬まれてじんじんと熱くなった耳とは、反対側へ視線を逸らしひどく躊躇する。

 そして武瑠はその躊躇を、持て余す時間を妹に決して与えはしなかった。

 「あぁ、そっかあ……」
 熱くなった耳へと、さらなる熱を打ち込むかのように、ふっと笑った武瑠は甘く吹きかける。

 「梨由はお兄ちゃんに、酷い事をされたかったんだ?」


 梨由は濡れた瞳を見開いた。
 薄暗がりのなか、落としてしまった部屋の鍵が、頼りなさげにぼんやりとした光を反射する。

 「それすらも言ってくれないなんて……ほんと、いじらしいね」
 ぐっと力を込めて、武瑠はゆびを深くへ捩じ込みながら妹の服を捲り上げた。
 「あ…っ、い…っ、痛…っ」
 思い切り入り口を拡げられ、走り抜けた痛みに梨由は汗に濡れた顔を歪ませる。

 「そういう顔、興奮するからもっとお兄ちゃんに見せなよ」
 背中へと片手を押し入れて、ブラジャーのホックを外しながら武瑠は中のざらつきを擦り始める。

 「あと……知ってる?梨由はね、本気で痛いときには何も言わないんだよ?」
 狭い部屋のなか、ぐちゅぐちゅという、兄のゆびが妹の中から響かせる音が響いていた。
 「いっ…や、あ…っ」
 梨由は湿った布団を、立てたつまさきで乱す。
 「自分から腰浮かせちゃって…やらし」
 武瑠は中でゆびを折り曲げ、執拗にGスポットを刺激する。

 「やだ…っ!お兄ちゃ…っ、抜いてぇ…っ」
 露にされた双丘を揺らしながら、梨由は懇願し、兄のシャツを無我夢中で掴んだ。
 「かわいいよ……梨由、嫌がる素振りも堪らなくかわいい……」
 息を乱し、妖しく笑って、武瑠は何もかもを躊躇しない。
 「……っ、う…っ」
 言葉だけ、囁きだけはこの上なく優しくて、梨由は身も心もまた兄に囚われてしまう。


 流した涙はやわらかな頬のうえで煌めき、ゆっくりと舐め取ってゆく舌づかいは、艶麗に。

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