第68話:Love!(vs Evil).44







 羚亜は、トイレになど行かず、正面玄関から外へと飛び出していた。

 「愛羅さんを何としてでも助けたいけど、さっきの悪魔ってやつの居場所がわかんないよっ…!」
 息をきらし、走っていた羚亜は、


 ドンッ―――――…!


 突然現れた何者かに、ぶつかって尻餅をついた。



 「いった…」
 顔をしかめていると、

 「どこへ行く気だったのかな?」

 頭上で、先ほどの悪魔の声がしたのである。



 「あっ!あんたに話があっ」
 顔を上げた羚亜は、



 凍りついた。






 悪魔の隣には、自分をさんざん苦しめつづけた、狼男が立っていた。


 「あ……」
 逃げようと思っても、全身が言うことを聞かない。



 「久しぶりねぇ、羚亜。元気にしてた?」
 オネエの素が出ている狼男は、ニヤリと笑った。


 「あれ?知り合い?」
 「ちょっとねぇ、」
 悪魔と狼男は会話をしているが、羚亜の心臓はおかしくなりつつあった。



 「あんたのせいでアタシ、酷い目に遭ったのよ?」
 昼間なので、変身を遂げられない狼男は、隠し持っていたナイフを引き抜いた。

 「死なないんだから、ちょっと切らせなさいよ。」






 「……………、」
 もはや羚亜は、放心状態である。

 「そう、大人しくて、いい子ねぇ。」
 笑いながら狼男は、ナイフを振り下ろした。






 バッ――――――…!

 鮮血が筋のように、ほとばしっていった。

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