※※第359話:Make Love(&Acme).218
(なぜたろうか、今ちょっとだけ、ほんの少しだけ……)
見送っていた皆さんは、赤面していた。
お腹が空いていることを見透かしてくれて、メロンパンとミネラルウォーターまで用意してくれて、夕食のことを考慮しているっぽい注意を優しくしてくれて、喉にパンを詰まらせないタイミングでキャップを開けて水を手渡してくださるあの一連の行動(実際には別の疑問を抱えていたのがすっかり彼のペースになっただけ)。
あの一連の行動と、超絶美形というポイントが見事にマッチングしてとある官職を彷彿とさせた。
(薔さまが執事みたいだった――――――…!)
ご主人様が執事になっているみたいな部分もあるし、執事でも呼び方はさまづけだけど、そこはかとなく執事っぽかったのに萌えた。
やはり、あのメロンパンは手作りだったのだろうと皆さんは思い込みたがっている。
ついでにミネラルウォーターも市販とかではなく、幻の名水をわざわざ採水して来てくださったのだろうと、勝手に思い込んでいたかった。
すごく動きにくそうだし体温調節が困難そうではあるが燕尾服で険しい山道や断崖絶壁などを乗り越えて、いつまでも世話の焼けるお嬢様のために髪や息を乱したり汗をかいたりしている姿が色っぽくて堪らない。
ただ水を採りに行っているだけなのに、どうしてもセクシーシーンになってしまう。
こうなると想像している側が否応なしに汗ばみ、息が乱れてハアハアした。
これ以上はもう……!の心意気でとりあえず妄想は止めてみる。
でも改めて、美しさは罪だと思った。
あと責められたい願望があっても何だかんだで、執事には素直に萌えた。
(あれ?)
メロンパンを美味しくいただいていたナナはふと、先ほどの疑問を思い出すことなく新たな疑問を浮かべた。
(薔がちょっとだけ、……メイドさまみたいではないですか?)
……いや男の子だから執事だよ、こけしちゃんの影響残りすぎだよ。
メイドでもさまはつくのが丁寧ではあるよ。
「エロ薔薇メイド王子ちゃんさま……」
「何か言ったか?」
ナナはうっかり最長のあだ名を作り出してしまい、振り向いた薔はばっちり聞こえていた様子だった。
「何でメイドと王子が一緒くたになってんだよ……キスしてやろうか?ここで……」
「ここでキスできるのなら修学旅行でエッチしてくださいよ――――――――っ!」
廊下で彼は堂々と確かめ、誰かに見られてはいるので焦ったナナはおかげさまで当初の疑問を思い出せた。
結局、廊下でキスはしてもらえなかった。
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