※※第359話:Make Love(&Acme).218








 こけしちゃんが小説にできるということはそもそもエッチできるのではないですか?という根本的な疑問を、さすがのナナでも抱けたのは放課後になってからのことだった。


 「どうした?お腹空いたのか?」
 急に黙り込んだ彼女の顔を覗き込み、一緒に部活へ行こうとしていた薔は心配そうな声を掛けてくる。
 熱があるのかとか具合が悪いのかとかではなく、純粋に、お腹が空いたのではないかという心配である。

 「確かにお腹は空いてますけど薔ったらお美しすぎ」
 「ん、」
 よくそこまでおわかりに!と感動したナナが彼の美麗さにも心底感動していると、薔はメロンパンを一個彼女に手渡した。
 いつお腹が空いてもいいように、用意してあったらしい。

 「一つで我慢しろよ?」
 おやつを食べすぎて夕食が食べられなくなってもいけないのでたしなめた彼は(単なる過保護)、さりげなくペットボトルのミネラルウォーターも手にしている。
 至れり尽くせりとはまさにこのことで、目撃してしまった人々は帰りにこぞってメロンパンを買いたくなった。
 自分で買っても至れり尽くせりにはならないが、イケメンにもらったものだと妄想しながら味わいたかった。




 「ああありがたくいただきます……!薔が作ったメロンパン!」
 「俺が作ってたら製造元記載してねぇよ。」
 ナナは感動のあまり、彼の手作りだと勘違いした。
 あきらかに個包装されているため、薔は指をさして指摘する。

 もう製造元は完全無視でいいのではないかと、たまたま聞いていた周りは思った。
 ちなみに、お腹がいっぱいになりすぎないよう最初から注意されている夕食は、しっかり彼の手作りです。


 「あれ?薔のメロンパンに喜んでましたら、先ほど何か疑問に思ったことがあったんですけど何だったか忘れちゃいました……」
 「腹が減ってたんだろ?」
 「あ!そうでしたか!」
 お腹が空いていたのとは違う疑問をナナは抱えていたのだが、上手いことなだめすかされた。
 メロンパンは甘くて、サクサクとフワフワのハーモニーがまた素晴らしく、彼女は幸せそうにパンを頬張る。


 「ほら、水。」
 「はりはろほらはっ……」
 彼女が幸せそうだと薔も幸せで、喉に詰まらせたりしないように適度に水も手渡してくれたりしながらふたりはイチャイチャ全開で部活へと向かっていった。
 ナナはメロンパンを食べながら流暢に英語を喋っているのではなく「ありがとうございます」がはっきり言えていないだけだった。

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