慰める

(高校生 ギャグ)

「なあ……ヴィンセント、そんなに落ち込むな」

「落ち込んではいない」

「……まだわからないだろ? そうと決まった訳じゃないし──」

「クラウド」

いや、分かりやす過ぎる。そんな目で人を見るな。目で殺されそうになるだろ。

目の前の奴は今、教室の窓から見てしまった光景に項垂れているし、俺は放課後の教室にこの男と二人きりの状況に項垂れている。


「あの二人が一緒に居るところを見たのなんて初めてだ。たまたま帰りが一緒になっただけだろ?」

「……」

「だいたい、あの真面目なイリスが、あんな赤髪のthe・不良みたいな奴を好きになるとは思えない、だろ?」

「名前はレノ。試験の成績は常に上位、運動も得意で各部活からの勧誘が絶えない。不誠実そうに見えて一途、だそうだ」

「……」

いやいやいや、いつ誰に聞いたんだ。詳しすぎるだろ。後輩相手に敵意剥き出し過ぎだ。

「このままではイリスが危ない」

アンタの方が危ない。



「やはり迎えに行くべきだった」

「そうだな。入り込む隙を与えなきゃいい。そんなに取られたくないなら尚更な」

この際、先輩だの後輩だの気にしてる場合じゃないってことに気が付いてくれたらいい。というか、"あの"ヴィンセントがわざわざ下級生の教室まで出向いて呼び出しなんてしようものなら、流石のイリスも気が付くだろう。

「そうと決まれば明日から迎えに行く」

「ついにやる気を出したのか。応援する。じゃあ早速明日の放課後に──」

「なんだと?」

……俺は何かマズイことでも言ったのだろうか。いや、どう考えても完璧な流れだっただろ。

「明日の朝、イリスの家まで迎えに行く」

「は、 朝? 家?」

家まで知ってるのかよ。しかも明日の朝から。よっぽど焦ってるんだな。まあ、これはこれで面白い光景かもしれない。



「……やはり今から行くべきだろうか」

「今から……って、どこにだ」

「イリスが無事に帰宅したか確認したい」

待て待て、それはある意味無事に帰宅出来なくなるんじゃないのか。今日はもう、そっとしておいた方がいいんじゃないのか。

「レノという輩も放ってはおけない」

殺すのか? やっぱりその鋭い目つきで殺すのか?

「行くぞ、クラウド」

「なんで俺まで」

「いざというときは援護を頼む」

いざというときって何だ、援護って何だ。

「お、おい、落ち着けって」

頼むからはやくくっついてくれ。


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