The Bride of Halloween | ナノ
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独白


映画が好きだ。
物語に決して、干渉できないのがいい。
数時間だけ、まったく世界から切り離されて違う世界を眺めていられる。
ハッピーエンドならなおのこと最高だ。
次回作がなければ、永遠に『めでたしめでたし』で世界は終わりを迎えられる。
時には次回作で散々になったり、酷く鬱になるようなバッドエンドだったり、中身自体がスカスカだったり、演技が棒だったり、文句を言いたくなるような映画もあるけれど。
それでも映画が、好きだ。
スクリーンの向こう側に広がる、決して干渉しえない世界を眺めている。

自分に与えられた能力は、他者の物語を覗き見する。夢のなかで、それはまるで『映画』のように展開されることがおおい。
映画と決定的に違うのは、物語に『干渉しえる』『干渉しえた』という点だ。
監督でも俳優でも脚本でもカメラでも音響でもなんでもない。部外者の観客にしか過ぎない。
美しいものがたりを、作るだけの才能は自分にない。嫌になるくらいにわかっていた。

もしかしたら、違うエンディングに辿り着けたかもしれなかったのに。
そればかり、考える。
愚かで、高慢な自分を投げ出しそうになるのを、引き留めてくれた手が私の目を塞ぐ。
見なくていいと、甘やかすように。
だから、きっと。

いつか、もう少しくらいマシな自分になれたらいいと思った。
だれかのために。







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