≫ 彼もまだ知らない未来
まっくろな、命のかたまりが掌の上におさまっている。
大事なひとの、残していったものを迅はそっと撫で、両手で捧げ持つように額に当てた。
鼓動は聞こえない。
熱もない。
つめたい、むきしつな、それがどうしても欲しかった。
太刀川は随分と怒っていたし、風間も納得はいかない表情をしていた。あまりにも一方的な勝ち方で、だれもがどこか唖然としていた。
嵐山が、心配げに見ていたのもわかっていたけれど気づかないふりをした。
(・・・・・最上さん)
閉じていた目を無理やり自分を奮い立たせて開ける。
立ち止まっている時間はない。未来は動き続けている。
近くで、遠くで。
「さぁーて、まだまだこれからだぞ『実力派エリート』」
言い聞かせるように、つぶやいた。
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