背中合わせの二人;BBB | ナノ
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HLPDから欲しい情報を手に入れた矢先にハルとばったり出くわすと彼女は露骨に嫌そうな顔をした。

「やぁ、ハリー。そんな顔しちゃ美人が台無しだぜ」
「・・・・アイスマン、また、誰を、ひっかけたの」

つかつかと距離を詰めると、今しがたあっていた相手の香水の移り香に気が付いたのか盛大に彼女は舌打ちをした。

「マギーね」

勿論スティーブンは情報源の秘密は洩らさない。「さて、どうだろう?」と答えを濁す。が、実際当たっているし、このごまかしもあまり意味はないポーズのようなものだ。「君の香りで上書きしてくれてもいいんだぜ?」なんてうっかり口を滑らせると、本当に射殺されそうなので黙っている。以前など、同じブランドのスーツを愛用していると知った時ときたら、すべてのスーツを処分して別のブランドに乗り換えるくらい徹底して嫌われている。ちなみに、どこまでやるんだろう?という興味本位で、ブランドが変わるたびに同じブランドのスーツをスティーブンも購入する。そのたびに、烈火のごとく怒り狂うハルの反応を見るのが楽しくなってきている、というあたりも彼女のあたりが強くなっていってしまう原因とはわかっているのだが中々やめられない。いっそ、メンズラインがないブランドならスティーブンも諦められるが、彼女はどちらかというと女性オンリーで作られるラインのブランドを好まないから、しばらくこのお遊びは続いている。ちなみに、今日のスーツは残念ながら揃いにはならなかった。


「進展は」
「ん?」
「連続婦女暴行殺人事件。どうも《そっち》よりの事件でしょ。つい今しがた4件目の被害者が発見された」

マギーからの情報にはなかった事件だ。

「・・・・この調子じゃ、また今夜あたり『やる』な」

犯行の感覚が少しづつ短くなってきている。味をしめたのか、手慣れてきたのか、倫理観がついに崩壊したのか、あるいはすべて。ブレーキなしに下り坂を転がりだしたら、何かにぶつかるまで止まれなくなる。

「こっちの情報が欲しいんなら誘惑してみるかい?」

つい今しがた、思わせぶりな素振りとキス一つで情報をとってきたスティーブンは嘯いた。ハルは勿論、秒で殴った。

「いたた、容赦ないなぁ。冗談だよ冗談」
「次、同じこと言ったら逮捕よ。あと、マギーにまた近づいたら射殺するから。あの子、ほんとに男の趣味が悪い」

署内にいるであろう同僚の顔を思い出しているのか、ハルは顔をしかめている。

「ハリー、共同戦線を張る気は?」
「そっちの出方次第。裏で手まわしてないで、直接こっちにこいってのよ。必要なら、情報は随時開示する」
「君が上に叱られるだろ?」
「事件解決には代えられないでしょ」

殴りついでに押し付けられた紙袋には、どうやら事件のデータが入っているらしい。

「もらってっていいのか?」
「そっちは予備。次の犯行は何としてでも食い止めたいのよ、四の五の言ってないで働いてアイスマンーーそれから、」

びしり、と指先がスティーブンをさす。

「愛称で呼ぶなって言ってるでしょ」
「君は僕を愛称で呼ぶのにかい?不公平だろそりゃ」
「OK、わかった。あんたのことは今後ミスタ・スターフェイズって呼ぶわね」
「・・・・・名前で呼んでくれていいんだけど」
「ではミスタ、私は仕事があるし、傷心の友人につけこむ屑の後始末のために署内に戻るから」

とうとうファミリーネームすら消えた。スティーブンは肩をすくめて「君の呼びたいように呼んでくれ」と白旗を挙げた。



***



「どうしてあんなあからさまに怪しいのにひっかかったの・・・・」
「だって・・・顔と声とスタイルがいい!無理よハル!ほほ笑まれたら・・・つい、口が滑るの!!」

アイスマンの氷は口すらも滑らかにするらしいといっそ感心した。マギーは「顔が・・・顔がいい・・・・ああでも、声も!視線に色気が・・・」と滔々と語っている。
ふざけんなそれで情報を垂れ流すじゃないと叱責するのは簡単だが、マギーでなくても他の誰かが口を滑らすのだろう。まったく、くそったれな事実だが。









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