ヒロアカaqua


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長い会議の後、ナイトアイ事務所のロビーにて集まった雄英生メンバー
先日治崎と接触した時のことを通形先輩と緑谷くんは話してくれた

「そうか、そんなことが…悔しいな…」

「出久…」

俯いている2人に何と声をかければいいか分からないでいるとエレベーターから相澤先生が降りてきた

「通夜でもしてんのか」

「先生!」

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ
いやァしかし…今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだがなァ…」

そう告げた先生に全員が驚いた

「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ、話は変わってくる
ただなァ…緑谷、おまえはまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ
残念なことにここで止めたらおまえはまた飛び出してしまうと俺は確信してしまった」

緑谷くんの前に目線を合わせるようにしゃがんだ先生は彼を見つめた

「俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう緑谷、わかったか問題児」

先生の拳が緑谷くんの胸に当てられた

「お前もだぞ舞羽」

「っ、はい」

先ほどよりは幾分か顔色が良くなった唄ちゃん
けれど彼女もまたエリちゃんを自分と重ねている
きっとこのままだと飛び出してしまうんだろう、緑谷くんのように

依然俯いたままの通形先輩
声をかけるのはビッグ3の2人

「ミリオ、顔を上げてくれ」

「ねえ私知ってるの、ねえ通形
後悔して落ち込んでてもね仕方ないんだよ!知ってた!?」

「…ああ!」

そうだ、大事なのは次どうするか
ここで俯いている暇なんてない

「気休めを言う、掴み損ねたその手はエリちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない、前向いて行こう」

「はい!!!」

緑谷くんは大きな声で返事をした

「…とは言ってもだ、プロと同等かそれ以上の実力を持つビッグ3はともかくお前達の役割は少ないと思う
蛙吹、麗日、切島、舞羽、海色、お前達は自分の意志でここにいるわけでもない、どうしたい?」

「先…っ、イレイザーヘッド!」

立ち上がったのはお茶子ちゃん

「あんな話聞かされてもうやめときましょとはいきません!」

「イレイザーがダメと言わないのなら…お力添えさせてほしいわ、小さな女の子を傷つけるなんて許せないもの」

「俺らの力が少しでもその子の為ンなるなら、やるぜ、イレイザーヘッド!」

「たとえ微力でもできることを精一杯やる、そのためにここにいます!」

お茶子ちゃん、梅雨ちゃん、切島くん、私の意見を聞いた唄ちゃんが顔を上げた

「…その娘の気持ちが痛いほどわかる…今度は私が救ける番です!」

その表情は覚悟を決めたような、そんな強い意志を感じられる

「意思確認をしたかった、わかってるならいい
今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的、それ以上は踏み込まない
1番の懸念であるヴィラン連合の影、警察やナイトアイらの見解では良好な協力関係にはないとして…今回のガサ入れで奴らも同じ場所にいる可能性は低いと見ている…だが万が一見当違いで…連合にまで目的が及ぶ場合はそこまでだ」

「「「「了解です!」」」」





色々な感情は残るけれど、エリちゃんの居場所が特定できるまでの間私たちは待機となった
また、インターンに関しては一切の口外を禁止された
いつものように授業を受けながらも気になるのは死穢八斎會のこと、そしてエリちゃんという女の子のこと

緑谷くん、飯田くん、焦凍くんと昼ごはんを食べている時、ぼーっとしている緑谷くんを不審に思った2人は彼を見つめた

「食わねえのか?」

「食うよ!食う!クー!!」

「(エリちゃんのこと…まだ思い詰めてるんだろうな)」

救えたかもしれないのに救えなかった
それがどんなに悔しいのかは緑谷くんと通形先輩にしかわからない

「…大丈夫か?」

「インターン入ってから浮かねえ顔が続いてる」

飯田くんと焦凍くんは鋭い
緑谷くんがなんて返すのか聞きながらもぐもぐとオムライスを頬張っていると彼は誤魔化すように「そうかな!?」と告げた

「"…本当にどうしようもなくなったら言ってくれ、友達だろ"
いつかの愚かな俺に君がかけてくれた言葉さ!職場体験前の…」

「うっ…うう…」

「え!?おい!!?」

涙を流し始めた緑谷くん
口外禁止な以上、話すことは出来ない
それでも優しさを感じて嬉しかったんだろう

「ごめん…大丈夫、なんでもない……ヒーローは…泣かない!」

涙を拭ってそう告げた緑谷くんは少し吹っ切れたようにも見えた

「いや…ヒーローも泣く時ゃ泣くだろ…多分」

「焦凍くん、それは深くツッこまない方がいいかも」

こんな時も天然炸裂な彼に苦笑いすると不思議そうな顔のまま緑谷くんに目を向けた

「ソバ半玉やろうか?」

「ビーフシチューもやろう」

「オムライスもどうぞ」

「ありがとう…」

緑谷くんの姿を見て彼はやっぱりヒーローに向いていると再確認した
だからこそ次は必ずエリちゃんを救い出す

そう意気込んでいた2日後の深夜
共同スペースにて集まったのはインターンメンバーの6人

「来たか?」

「うん」

「決行日」

手元のスマホには死穢八斎會へのガサ入れの決行日
ということはエリちゃんの場所が判明したんだろう

6人で顔を見合わせ頷く
できることをそれぞれが最大限やる、そう思いを込めて









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