ヒロアカaqua


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ジリリリリリリという音と共にアナウンスが鳴り響く

『ヴィランによる大規模破壊が発生!
規模は○○市全域、建物倒壊により傷病者多数!
道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着する迄の救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う
1人でも多くの命を救い出すこと!!』

スタート

飛び出した私の近くにいるA組のメンバー

「百ちゃん、私がこの辺りの要救助者を見つける
見つけ次第真上に水泡を浮かせて合図するから他のみんなにも指示をお願い!」

「えっ?」

瓦礫と化した市街地エリア
その中を駆けながらそう告げた私にみんなは不思議そうな顔をする

息を吸って体を液状化する
少し前までは腕や体の一部しかできなかった
けれど圧縮訓練のおかげでなんとか全身液状化にこぎつけた

「(液状化中も水泡くらいなら空気中の水分も併用可能にしていてよかった)」

どろりと溶けたようにいなくなった私を見てギョッとするA組面々
しかしいたるところに水泡が浮かんだのですぐに救助へと動いた

全身液状化、その状態でなら水が通れるところ全て移動可能だ
それにこういった瓦礫の下なども容易に入っていける

「(ここは3人)」

水泡を3つ飛ばして次の場所へ移動する
それを繰り返しこのエリアの要救助者全員を見つけ終わった段階で液状化を解く

「はっ…はあっ…」

全身液状化するにはかなりの体力を消耗する
肩で息をする私に近くにいた瀬呂くんが「ナイス海色!少し休んでろ」と声をかけた

「ううん、大丈夫!」

休んでる暇なんかない
私の個性でまだ救けられる人がいるはずだ
全身液状化はまだ数分しか維持できないけれどそれでもこの個性が役に立っているのなら無駄じゃない

と、その時爆発音と共に救護所の傍の壁が弾け飛んだ
姿を現したのはギャングオルカとそのサイドキック達

『ヴィランが姿を現し追撃を開始
現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ救助を続行してください』

その光景に冷や汗が伝う

「(どうする、ここで救助を続行するかヴィランと戦闘に行くか)」

「救けて…」

すぐそこで聞こえた声
そちらを見れば苦しそうにしている子供

すぐに駆け寄って「よく頑張ったね、もう大丈夫だよ」と声をかける
外傷はそこまで酷くない、けれど足が折れているようだ

「瀬呂くん、この木で足を固定できる?」

「任せとけ」

応急処置を施してからその子をおぶって救護所へ向かう
その間も聞こえてくる戦闘の音

救護所の人はみんなヴィランから逃げるためにフィールドの奥へと避難していた
先導は唄ちゃんが行っているようでホッとする

怪我の具合で患者を分けているんだろう、振り分けをしている方に子供を預けてから市街地に戻ろうとする
けれどその時見えたのはヴィランを前に喧嘩している焦凍くんと夜嵐くんの姿

「…は?」

何?どういうこと?
だって今この場はたくさんの要救助者で溢れていて、みんなが協力して救助活動をしているのに

気付いたら飛び出していた

「何をしてるの!!!」
「何をしてんだよ!!!」

真堂さんを庇う緑谷くんと同時に到着し、すぐに焦凍くんの炎を水でかき消す
2人でもめて連携も取れずましてや他の救助者を危険に晒すなんてあり得ない

「雫…っ」

「雫さん…?!」

真堂さんと緑谷くんがこの場を離れたのを確認しギャングオルカと向き合う

「ほう、増援か」

けれどサイドキックの面々が放ったセメントガンに襲われ防戦一方に追い込まれる

「こっちは引き受けます!シャチョーはそいつらを!」

周囲を複数人に囲まれ、四方八方から襲いくるセメントガンに水の壁を展開した
その間に他のサイドキックが焦凍くんや夜嵐くんをギャングオルカと共に追い詰める

地面に落とされ動けない夜嵐くん
ギャングオルカに捕まれ動けない焦凍くん

「(私がやらなきゃ)」

腕を一振りし私を囲うサイドキック達の周囲にシャボン玉を生む
即座に爆破し撃退、残っていたサイドキック達が避難している要救助者たちに向かっていくのを止めるため巨大な氷の檻を形成し全員閉じ込めた

「ほう、やるな」

背後で聞こえた声にハッとする
そこにはギャングオルカ

「っ!!(液状化は間に合わない!)」

超音波アタックがくるか物理攻撃か、どちらにせよ間に合わない
そう思った直後、ギャングオルカが炎の渦に包まれた

すぐに離れ状況を整理する
夜嵐くんの風と焦凍くんの炎で生み出されたそれはギャングオルカを封じていた

「おい後ろ!後ろ見ろ!!」

「シャチョーが炎の渦で閉じ込められた!」

「マズくないか!?」

檻の中にいるサイドキック達が慌て始める
巨大な檻のため耐久が脆いそれは少しずつヒビが広がり崩れ去る

「よし!未だ!夜嵐はいい!轟を止めろ!!」

焦凍くんに向かって放たれたセメントガン
けれどそれを氷で防いだ彼に口角が上がる

「(それでこそ焦凍くんだよ)」

左右の同時発動
難しいそれをできるのは彼が努力家だからだろう

「ヘルプに戻るか」

「いや待て!」

慌てるサイドキックの面々を円形に囲う水の壁

「残念、来させないよ」

「くそっ!海色を止め」

矛先は私に向くだろう
だけど残念、避難が完了したらしい
緑色の閃光が走った

「海色さん!!」

駆けつけた緑谷くん、それに尾白くんが身動きの取れないサイドキック達を撃退していく

「海色ナイス!もーちょっとだけ壁張っててね!」

そう告げ飛んできたのは三奈ちゃんと常闇くん
どんどん集まってきたみんなに形成が逆転した

「ゾロゾロと…!一斉掃射だ全員かためたれ!!」

そう告げたサイドキックが一斉に吹き飛んだ
それは透明化していた梅雨ちゃんによるもの

「梅雨ちゃん!」

「ケロ、雫ちゃんのおかげで足止めは完了しているわ
あとはみんなで撃退するだけよ」

続いて現れたのは士傑高校の毛むくじゃらの人

「イナサを向かわせたはずだが…まだこんなに残っているとは士傑の名折れよ!!」

一瞬でその毛でサイドキック達を絡めとる
全員が必死に戦う
そんな中聞こえたのはギャングオルカの声

「炎と風の熱風牢獄か…いいアイデアだ、並のヴィランであれば諦め…泣いて許しを乞うだろう
ただ、そうでなかった場合は?撃った時には既に次の手を講じておくものだ」

乾燥しているはずのギャングオルカはペットボトルの水で保湿を取り戻していた
放たれた超音波アタックで炎の渦が消し飛ぶ

「で?次は?」

まずい、加勢しないと
けれどこっちの水の壁も解けない
そんな時彼は動いた

「2人から離れてください!!!!」

ギャングオルカに蹴りを入れたのは緑谷くん

本当に彼はヒーローだ
困っている人がいれば動いてしまう
そんな緑谷くんに2人を任せよう、そう思った時ブザーが鳴り響いた

『えー只今をもちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました
まことに勝手ではございますがこれにて仮免試験全工程終了となります!!
集計の後この場で合否の発表を行います、怪我をされた方は医務室へ…他の方々は着替えてしばし待機でお願いします』










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