ヒロアカaqua


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ボールとターゲットを受け取り受験生みんなが各々散っていく

「先着で合格なら同校で潰し合いはない…むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋!
みんな!あまり離れず一かたまりで動こう!」

そう告げた緑谷くん
けれど早速団体行動を見出したのは2名

「フザけろ遠足じゃねえんだよ」

「バッカ!待て待て!!!」

爆豪くんとそれを追いかける切島くん、上鳴くん

「俺も大所帯じゃ却って力が発揮できねえ」

「焦凍くん!?」

焦凍くんもそう言って走っていくので慌てて追いかける

緑谷くんの言い分はこうだろう、学校単位での対抗戦になるこれはどこの学校を狙うかという話になる
全国の高校が競い合う中で唯一"個性不明というアドバンテージ"を失っている高校
体育祭というイベントで個性はおろか弱点、スタイルまで割れたトップ校

どんどん走っていってしまう焦凍くんに離されたところでスタートの合図が聞こえた
その直後、私に向かって放たれる複数の個性そしてこちらへ向かってくる面々

「(やっぱり雄英潰しだ)」

狙われているという緊張感に息を飲む

「海色雫ちゃんだよね!」

「この前はご愁傷様」

襲いかかりつつ悠長に話す他校の面々
神野の嫌味を言うくらいには余裕らしい

「(なら手加減はいらないよね)」

焦凍くんとははぐれてしまったし、探している内に100人を迎えても困る
なら彼を信じて私は目の前のことに集中しよう

この空間、私の周り半径50mの円の中の水分一つ一つを感知する
そしてそれらを脳内でつなぎ合わせていく
全て受験者に直撃するように繋いだその軌道そこを辿るように放ったのは小鳥の形を模した水
勢いよく飛び立ったそれが急旋回などを加え羽ばたく

私の必殺技"スワロウストライク"

「い゛っ?!」

「なっ」

「なにが…!!」

たった数秒、けれどその数秒でこの場にいる受験生全員を攻撃した小鳥は役目を終え消える
体勢を崩した受験生たち全員を今度は水の渦で巻き取る

「ちょ、まっ」

「ご愁傷様です」

先ほど言われたことをそっくりそのまま返して微笑んだ私は渦に紛れさせていたボールで受験者を脱落させる

『2人目の通過が出ました…って脱落者60名!!?の、残り98名です』

そっか、渦に巻き込まれた人たちのボールも一緒に巻き取ってしまったらしい
巻き添えで脱落した人には申し訳ないけれど雄英潰しをするならそれ相応のリスクを負うべきだ

身につけているターゲットから控室へ移動するよう指示が飛んだので歩いていく
控え室に入ると1人目通過は唄ちゃんだったようで嬉しくなる

「唄ちゃん!」

「雫ちゃんお疲れ様!」

いえーいとハイタッチをして用意されていた軽食をつまむ
するとすぐに3人目の通過者が入ってきた、先ほど出会った夜嵐くん
ぼーっと見ていると目があってしまった、すると夜嵐くんはずんずんと近づいてくる

「え、な、何?」

ギョッとしている唄ちゃんの隣で様子を見守っていると、目の前まで来た夜嵐くんは私の手を握った

「海色雫さん!さっきの技見てました!痺れたっス!!」

「え、あ、どうも…?」

「あと自分、あなたが好きっス!!!」

そう叫んだ夜嵐くんにぽかんとしてしまった
好き?好きってあの恋愛感情の好き?

「(え、私たちさっきが初対面だけど)」

それに今は絶賛試験中
状況が飲み込めなくて困惑していると唄ちゃんが「あの、手、離してもらえませんか?」と夜嵐くんに告げた
それを聞いた夜嵐くんはハッとして頭を下げた
今朝同様の豪快すぎる下げ方

「すみません!自分熱中すると周りが見えなくなるってよく言われてて!」

「は、はあ…?」

「でも雫さんを好きなのは本心っス!!!」

唄ちゃんの視線を感じるけれど私は終始フリーズ
その間に唄ちゃんが夜嵐くんに試験が終わってからにしようとやんわりと制してくれていた

「(って、任せっきりになってしまった!!)」

唄ちゃんに謝ったけれど、何故か「守るから任せて」とのこと
おっと、何か勘違いしている気がするけど大丈夫かな?

そこまで考えた時4人目の通過者が入ってきたので考えることを中断する









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