ヒロアカaqua


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9月上旬


ヒーロー仮免所取得試験当日

「降りろ到着だ、試験会場国立多古場競技場」

大きすぎるその建物を前にA組一同は降り立った

「この試験に合格し仮免許を取得できればおまえら卵は晴れてヒヨッ子、セミプロへと孵化できる頑張ってこい」

「っしゃあ!なってやろうぜヒヨッ子によぉ!」

「いつもの一発決めて行こーぜ!せーのっ」

Puls Ultra
そう叫んだA組に混じって叫んだその人物にギョッとする

「(誰だろう…?)」

「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよイナサ」

「ああしまった!どうも大変失礼致しましたァ!!!」

ガァンッ!!!と勢いよくお辞儀し頭を下げたその人に引き気味の一同

「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」

「飯田と切島を足して二乗したような…!」

と、その制服を見てピンと来た爆豪くんが「東の雄英、西の士傑」と告げた
そういえば入試のパンフレットに載ってた士傑高校の制服ってこんな感じだったっけ

「一度言ってみたかったっス!プルスウルトラ!自分雄英高校大好きっス!!!
雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!よろしくお願いします!!!」

頭を上げたその人の頭から血が流れている姿にまたまたギョッとする
近くにいたのでポケットからティッシュを取り出し彼に差し出した

「あの、大丈夫ですか…血が…」

試験前に怪我なんて災難だなと思っているとその男の子はフリーズしている
あれ、まさか打ち所悪かったとか?と慌てているとハッとして動き出した

「ありがとうございます!!!」

ティッシュを受け取って先を歩く士傑高校の輪の中に入って行ってしまったその子
まるで嵐のような人だったなと思っていると、近くにいた相澤先生が「夜嵐イナサ」と告げた

「先生知ってる人ですか?」

「すごい前のめりだな、よく聞きゃ言ってることは普通に気のいい感じだ」

「ありゃあ…強いぞ
夜嵐、昨年度…つまりおまえらの年の推薦入試
トップの成績で合格したにも拘わらず何故か入学を辞退した男だ」

その言葉に目を丸くする
推薦入試といえば焦凍くんが受けたやつだ

「(トップ…っていうことは…)」

チラッと焦凍くんを見れば少し考えるような素振りをしている

「雄英大好きとか言ってたわりに入学は蹴るってよくわかんねえな」

「ねー、変なの」

「変だが本物だ、マークしとけ」

先生に頷いた時、明るい声が聞こえた

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!
テレビや体育祭で姿は見てたけどこうして直で会うのは久しぶりだな!」

近づいて来た女性はにっこりと笑顔を浮かべた

「結婚しようぜ」

「しない」

「「わあっ!!!」」

突如舞い込んできた恋愛に香りに三奈ちゃんと唄ちゃんが盛り上がる
緑谷くん曰く彼女はMs.ジョークというヒーローらしい

「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ」

「その家庭幸せじゃないだろ」

いつも通り淡々と返す相澤先生とMs.ジョークのやりとりを眺めていると、彼女の受け持ちのクラスの面々が集まってくる

「傑物学園高校2年2組!私の受け持ちよろしくな」

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね
しかし君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだねすばらしいよ!!
不屈の心こそがこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」

そう爽やかに告げどんどんA組のみんなの手を握って握手していく真堂さん
その手が唄ちゃんの手を掴みかけた時、爆豪くんが真堂さんの手を弾いた

「神野事件を中心で経験した爆豪くんと海色さん、君たちは特別に強い心を持っている
今日は君たちの胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」

そう告げた真堂さんに苦笑いを返した私と異なり爆豪くんは彼を睨みつけていた

「フかしてんじゃねえ、セリフと面が合ってねえんだよ」

爆豪くんの言う通りだろう
わざわざご丁寧に挨拶までしてくれるなんてよっぽどナメられてるのかもしれない

するとその時、傑物高校の女子生徒が焦凍くんに近づくのが見えた

「ねえ轟くんサインちょうだい、体育祭かっこよかったんだあ!」

「はあ…」

断らずに対応している焦凍くん
確かに焦凍くんはイケメンだし、体育祭もかっこよかったと思う

「(でもなんか嫌だな)」

前に焦凍くんには言ったけど一番仲のいい女の子でいたい
好意もあるし、仲のいい友達としても


その後更衣室でコスチュームに着替え、通された部屋に所狭しと並ぶ受験生
その多さに呆気にとられていると、壇上にいる人が話し始めた

『えー…ではアレ、仮免のヤツをやります
あー…ヒーロー公安委員会の目良です、好きな睡眠はノンレム睡眠よろしく
仕事が忙しくてろくに寝れない…!人でが足りてない…!眠たい!
そんな信条の下ご説明させていただきます』

一切疲れを隠す様子のない目良さんに遠い目をした
試験中倒れたりしない?大丈夫?

『ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます
現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくありません
まァ…一個人としては…動機がどうであれ人助けしている人間に"何も求めるな"は…現代社会に於いて無慈悲な話だと思うワケですが…
とにかく…対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助、ヴィラン退治に切磋琢磨して来た結果、事件発生から解決に至るまでの時間は今ヒくくらい迅速になってます
君たちは仮免許を取得しいよいよその激流の中に身を投じる、そのスピードについて行けない者、ハッキリ言って厳しい
よって試されるはスピード!条件達成者先着100名を通過とします』

1540人いる会場でたったの100人
相澤先生は5割と言ったがそんなもんじゃない
ここまで減ったのは社会で色々あったというのが理由らしい
ステイン、オールマイトの引退、諸々…全てが重なった故の決断

『で、その条件というのがコレです』

目良さんの手元にはボールとターゲットのようなもの

『受験者はこのターゲットを3つ、体の好きな場所
ただし常に晒されている場所に取り付けてください、足裏や脇などはダメです
そしてこのボールを6つ携帯します、ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで3つ発光した時点で脱落とします
3つ目のターゲットにボールを当てた人が"倒した"こととします、そして2人倒した者から勝ち抜きです、ルールは以上』

入学試験と似て非なるもの
ボールの所持数は合格ラインぴったり、3つ目のターゲットをかすめ取ることも視野に入れた動きが必要になる
入試以上に苛烈なルールのそれに冷や汗が伝う

『えー…じゃ、展開後ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートとします』

「(展開?)」

と、その瞬間部屋の辺がどんどん開いていき、まるでその部屋は最初からそのためだけに仮設されたような箱だったということ
開けた視界、そこは競技場のフィールドで様々な地形が見て取れる
岩山、工場地帯、滝、市街地などなど

『各々苦手な地形、好きな地形あると思います
自分を活かして頑張ってください』









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