ヒロアカaqua


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第4セット


「さて第4セット!A、B共に1勝1分け
現在両者互角のように思えるがぁあ!?
しかしA組の1勝はほぼ心操のおかげ!はたして互角と呼べるのか!?」

偏向実況を隠すこともなくなってきたブラドキング先生に文句を言うA組面々
なるほど、私たちの試合は引き分けだったらしい

「少なくとも海色さんとアタシの勝負はこちらの勝ちよ!」

ふふんと得意げな闇舞さん
いや、何でずっと隣にいるんだろう
さっきまで唄ちゃんのことで一方的にライバル視されてたはずなのになんだこの距離感は

「おまえらやめろ」

「先生!これは正当なデモです!!」

「現場で失敗しても同じことをするか?B組の方がより深く対策を講じてる、これが事実だ
俺よりブラドの方が上手だったようだ」

そう告げた相澤先生にデモを行なっていたA組の面々が悔しそうな表情になった

「所詮トラブルメーカー!知ってた!?トラブルってのは未熟者が引き起こすんだよ!!」

アハハハハ!と高笑いする物間くんに呆れた視線を送っていたけれど、戦況が動いたのでモニターに目を向けた

『耳!唄!全員近くにいるハズだ探れ!!』

爆豪くんの指示通りすぐに索敵を開始した2人
けれどハッとした顔になった

『待って…』

『やられた!!』

叫んだ2人
直後、爆豪君の周りを取蔭さんの個性で切り分けたバラバラの全身が襲う

「今あれ50くらいには分割できるらしいわ」

「50!?」

そんなに!?と驚くと再び得意げな顔の闇舞さん
なるほど、私にはとことんマウントを取るつもりらしい

『爆豪こっちへ!』

すぐにテープを張り巡らせて攻撃を防ぐ瀬呂くん
けれどそれすら取蔭さんの思惑だったらしい

『ハイ、しゅーりょー』

テープ目掛け放たれたのは凡戸くんの個性の接着剤

『やっべ!ハメられた!』

『ええーやった、切奈のプラン通りじゃん』

『こっちへ!』

『ヒャッヒャッヒャ襲い襲い』

接近に合わせて音を鳴らすことで気づかせない
ボンドでベタベタのパイプとテープは触れば取れない

「(A組の動きが全部逆手に…)」

『下がって!!』

落下してくるパイプから瀬呂くん、響香ちゃん、砂糖くんを庇おうとした唄ちゃんが羽を広げ迎撃体制に入る
けれどそれよりも早く動いたのは爆豪くんだ
取蔭さんの個性に翻弄されながらも爆破で落下してくるパイプを吹き飛ばした

遮蔽物がなくなったことで飛び出してきた鎌切くんと豹牙さん

『まず面倒な耳郎と』

『舞羽!!』

襲いくる鎌切くんから響香ちゃんを守るために割って入ったのは爆豪くん
響香ちゃんの背を蹴り鎌切くんから距離を取らせてすかさず彼を爆破した

そして唄ちゃんも爆豪くんが来ると分かっていたようで、宙を舞いつつも爆風で飛ばされないように爆豪くんの肩を掴んで思いっきり音波の個性を放った
それは豹牙さんに直撃するけれど、彼女は慌ててジャンプし距離を取る

『っ、切奈ァ!!!』

『何してンだァ!?』

予想外のことに驚く鎌切くんと豹牙さん
きっと爆豪くんを足止めすればなんとかなると思ったんだろう
それにもし乱入したとしても飛んでいる唄ちゃんは爆風で飛ばされてしまう
響香ちゃんか唄ちゃんどちらかを撃破すれば索敵要員を減らせる…それが初動の流れだったはずだ

「(でも外した)」

『防いだかよ!虫は反射が速えーなァ!?』

追撃と言わんばかりに再度爆破する爆豪くん
けれど爆豪くんとは正面でやりあわない作戦なんだろう、2人は退いていく

「あっれえ僕の目が変なのかなァ?彼、耳郎さんを庇ったように見えたなァ」

「庇ってたな!足蹴で!」

「物間大丈夫だ!あいつは意外とそういう奴だ!目変じゃないよ」

物間くんの問いに答えるのは上鳴くんと切島くん
普段から爆豪くんと仲良い…仲良い?メンバー

「キャラを変えたっていうのか!!!?」

絶叫したくなる物間くんの気持ちもわかる
けれど爆豪くんは神野の時も私を庇ってくれたりしたので今更驚くことはない

「…うんまァ、身を挺すようなわかりやしーのは確かに初めて見るかもな!」

何があったのか知らないけれどどんどん成長する爆豪君に降格が上がってしまう

『ありがと』

『うるせェ逃げたぞ探せ!!授業だろーが何だろーが関係ねェーんだよ
決めてンだよ俺ァ!勝負は必ず完全勝利!5-0無傷!これが本当に強ぇ奴の勝利だろ!!』

根本的な部分は何ら変わってない
けれど確かに何かが変わった

B組は再び距離を取って待ち伏せするつもりだ
同じ戦法を繰り返してミスを誘発するつもりだろう

再び索敵をする響香ちゃんと唄ちゃん
爆豪くんも思惑に気がついたんだろう、B組を追うために飛び出した

が、進路上に音もなく現れたのは泡瀬くん
爆豪くんは壁に溶接されてしまう

『把握されすぎー!!』

『ほんとそれ!』

瀬呂くんのテープと唄ちゃんの羽が泡瀬くんへ向かうけれど彼はそれを避ける

『なめんな!』

『行け!!』

爆豪くんの溶接された部分を籠手もろとも壊した砂糖くん
すぐに爆豪くんが泡瀬くんを追いかける

泡瀬くんもすぐに迎撃態勢に入って再び溶接しようと試みた
けれど爆豪くんは今度は真上に飛び、泡瀬くんを避ける

『任せるぞ』

飛び上がった爆豪くん
泡瀬くんの目に映ったのは瀬呂くんに抱えられた響香ちゃん

『任』

『された!』

響香ちゃんの個性が炸裂
これで泡瀬くんが戦闘不能になった

爆豪くんは2人にその場を任せ既に凡戸くんへ向かって飛んでいる
慌てて接着剤を撒いた凡戸くんだけど、爆豪君は相変わらずの器用さで爆破を繰り返して全て避ける

『冬は調子がクソでよォ…やっとあったまってきた』

背後から爆破された凡戸くんを砂糖くんがすかさず羽交い締めにした

『確保だーーー!!』

まさに一瞬
そして完璧な連携にB組だけじゃない、A組もざわついた

「なんという迅速な連携!!一瞬で俺の可愛い2人を確保!!」

ブラドキング先生が嘆いても仕方ない
今までの戦いが何だったんだと思えるくらいにスムーズすぎる戦いだ

「協調性皆無の暴君だったろ…!?丸くなったどころじゃないぞ!!!」

物間くんと同じ思いなのは取蔭さんもだろう
明らかに表情に焦りが生まれている

『勝己!!』

唄ちゃんが指差した方向へすぐに飛んでいく爆豪くん
向かう先には鎌切くんの姿

すぐに追いついた爆豪くんはものすごいスピードと運動神経で即座に鎌切くんを撃破
と、その時取蔭さんが戻した部位の1つについていた手榴弾が爆発した

その爆破を見た爆豪くんは目にも止まらぬ速さで取蔭さんへ向かっていく

『させない!!』

邪魔するように爆豪くんへ向かってきたのは雪豹へと姿を変えた豹牙さん
けれど爆豪くんにその鋭い爪が届く直前

『ごめんね、勝己の邪魔はさせない』

どこからともなく現れ、爆豪くんの腕を掴んだ唄ちゃんが彼を上に投げる
そして向かってきた爪を背中の羽で切断した

「えっ」

「切った?!」

唄ちゃんの羽が硬化していようが豹牙さんの爪は砕けないはず
それなのにいとも容易く切断してしまった唄ちゃんは、そのまま豹牙さんを地面に叩きつけた
起き上がる前に至近距離で音波の個性を放った唄ちゃんと、取蔭さんにスタングレネードを放った爆豪くんの同時攻撃

結局5人全員がすぐに投獄されA組の圧勝

「わずか5分足らず…!思わぬチームワークでA組5-0の勝利だ!!」

戻ってきた一同に先生から講評が行われる
相澤先生が告げたのは褒め言葉
それを聞いて唄ちゃんと響香ちゃんはハイタッチをしている

この試合は爆豪君を中心に組み立てたもの
けれどちょっと前までの唄ちゃんなら構わず自分も突っ込んでいただろう
それが今では最善を選択できている

"あの子は肌で感じ取ってみるみる吸収していく"

教わったわけでもなく肌で感じとっていく唄ちゃんの成長
それを目の当たりにして無意識の内に拳を握っていた









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