愚者へ贈るセレナーデ

  ナイトメアモード




叛逆行為が開始した直後、猛スピードで駆け抜ける私たちの車を追う帝ノ鬼の車


「赤信号!」

「突っ切れ!」

「横からも敵!追突されま」


直後、車が吹き飛ばされた


「斬り裂け、ノ夜!!」


グレンが屋根を斬り車外へ飛び出す

彼の腕にはいつの間にかシノアが抱えられていた

私たちも全員無傷で車外に出たけれど、周囲を囲まれている


「どうする?」

「戦うのは無理だな、逃げる、大勢が入れない路地裏を選んで」


その判断が賢明だろう

私も刀を抜いて周囲を見渡した

私がずっとできなかった柊への反乱

それが遂に叶うらしい


「おい五士、こいつを運んでくれ
運びながら幻術での援護は」

「できる」

「美十と小百合が先頭、その援護に時雨」

「「「はい」」」


グレンを中心にまとまったこのチーム

もうチグハグなんて言わせない


「殿は俺と夜空だ、深夜俺たちの援護を」

「僕がサボれば君たちすぐ死ぬね」

「サボんなくても死ぬよ」

「ケーキ食べたいから頼んだよ深夜」


冗談めかしてそう告げると深夜はフッと笑った


「あー…エクストラハードモードの上だ…なんつったっけあれ、美十がハマってたゲームの」

「えと、ナイトメアモードですか?」

「こえー、おまけに練習なしの初見殺しだろ!無理だろこれ」


ゲームならリセットもできるけれどこれは現実

死ねばそこで終わりのたった一度の遊びじゃないゲーム


「よし行くぞ、全員能力以上の力を発揮しろ…信じてるぞ」

「「「「「「えー」」」」」」


ようやくグレンがデレたと言うのに全員が不満げな声を漏らす

直後、一斉に走り出した


"みんな殺しましょう"

「そうだね」

"血の色に染めてそれで大好きな仲間を守らなきゃ"

「…わかってる…力を貸して劫火桜」


私のことを抱きしめるように腕を回した劫火桜

直後、欲望と狂気がぐんと引き上がる

すると横路地からやってきたのは学校のクラスメイト

鬼呪装備の一般化に向けて適正試験を受けた際に一緒に受けた面々だ

みんな鬼呪装備を構えている


「ごめん一瀬くん!君に恨みはないが抹殺命令が出た!」

「裏切り者は大人しく死になさい!」


武器を振り上げる生徒たちへ刀の切っ先を向ける


"殺せ"


「死ねぇえええ!!!!」


生徒の一人が放った矢が巨大な蜂になって襲い掛かってくるが深夜の白虎がそれを阻止した

その間に間合いに入った私とグレンは躊躇なく生徒の頭を斬って吹き飛ばす


「貴様ぁあああ!!!」


グレンへ向かっていく生徒、跳び上がってその頭を掴んだ私は勢いよく首を180度捻った

骨がゴキゴキッと音を立て男子生徒が倒れる

直後、傍にいた女子生徒を深夜が撃ち抜いた


「…くそ、謝らないぞ」


グレンは優しい

少ししか関わったことがなくて、自分を殺そうとしたクラスメイトにも情を持ってしまう


「(私が殺らなきゃ)」


柊のおかげで人を殺すのも抵抗がない私が


「グレン!路地まで道を開いた!撤退だ!」


次々と集まってくる敵

斬っても斬っても減る気配はない、もう百五十人は超えたと思う

果たしてこの戦争で生き残れるのだろうか

生き残ってその上、世界の破滅を止めなければならない

クリア条件不明、コンティニューなし、ゴールがあるかもわからないナイトメアモード

敵は見知った顔もあり、仲間を誰一人殺されるわけにはいかないまさに初見殺し


「いくぞおおおおお!!!!」


血と亡骸だらけの道を突き進む私たちの未来は明後日もあるのだろうか






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